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そのなにかと、なにかに捕まった青猫はその勢いのまま冬の冷たい水の流れる小川、しかも、月が明るくなる前はわからなかったけど、数日前に雨でも降ったのか、思ったよりも水の量が多くて、勢いも強い川の中に突っ込んでいった。
大きな水しぶきが上がる。
そんな突然の出来事に驚きながら、自然と足を止めた星は、両膝に両手をついて、肩で息をしながら、ぽかんとした表情でその光景を見つめていた。
『ねえ? 青猫やばいんじゃない?』
魚の声で我に返った星は斜めにかけていたボストンバックを慌てて、投げ捨てるようにして、その近くに落とすと、急いで水しぶきの上がった場所に駆け寄っていった。
すると小川の中には一人の見知った顔の少年がいた。勢いのある小川の底に尻餅をつきながら、両手で青猫を持ち上げて、青猫が冷たい小川の水につかるのを防いでいる。
その少年は嬉しそうな顔で暴れる青猫を見つめていたが、自分を見ている星に気がつくと、今度は星のほうに視線を移して、青猫を見ていたときと同じように嬉しそうな顔をした。
その少年は澄くんだった。
澄くんの顔を見て、星はなんだか泣きそうになった。