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星は小川の流れにそうようにして右に大きく曲がった。
するとしばらくして、急に星の周囲の夜が明るくなった。それは白い月の光だった。白い月はその明るさをまして、もともと冬の夜にしては明るかった青色の星空に照らされている白い河原を、さらに明るく照らし出した。星は突然のその光に驚いた。同時に視界が開けて、星の目にも青猫の姿が見えるようになった。それはとても不思議な現象だった。
「魚! これって、どういうこと!?」
『さあ、僕に聞かれてもわからないよ。本を読んで調べるか、もしくはあとで澄にでも聞いてみたら?』魚はさも興味なさそうに言う。
もう! 魚は自分の興味がないことに関しては、本当に役に立たないんだから。そういうところが、可愛くないんだぞ!
星はとにかく、不思議な現象と役に立たない魚を無視して、その意識を青猫に集中させる。
青猫は怪我した足をかばうようにして、蛇行しながら小川のそばを走っていた。夜がいきなり数倍も明るくなったことに青猫も驚いているようだ。
周囲の状況を確認しようとして、青猫は走りながら後ろを振り向いた。するとそこには星がいた。まるで星が突然、暗い夜の中から飛び出してきたように青猫には見えたのだろう。星の姿を見て驚き、走るペースを一気に上げた。
逃がさない!!
ここなら間違いなく追いつける。小川は右に曲がってだんだんと森に近づいている。森の中に逃げ込まれたらそれで終わりだ。星は青猫が森の中に逃げ込んでしまうことに注意して、青猫を真後ろから追わず、少し右寄りの森に近い場所を走りながら、徐々に左に寄って青猫を追い詰めていく。