53 第二幕 雨、止まないね。
第二幕
開演 雨、止まないね。
はあ、はあ。
……息が上がる。バックが邪魔でうまく腕を動かせない。
星は前方の薄い闇を見つめる。青猫の姿は見えない。でも気配は確かに感じる。その闇の中に青猫はいる。
足もとが悪い。河原の上を走るのは初めてだ。陸上部の練習メニューには、こんな走りにくいコースはなかった。
「失敗したかな? 悪路で走る練習もしておけばよかったよ」
そう言いながらも星は軽快な走りで、河原の上を駆け抜けていく。不慣れな地面のせいか星の息は珍しく上がっている。それでも星はそのペースを乱さず、一定のリズムで呼吸を整え、足を動かし続ける。
『相変わらず君は運動神経がいいね。羨ましいよ』
魚は星にそんなことを言う。
「別に普通よ。特別良くもないし、悪くもないわ」それは事実で星の体育の成績は常に平均と同じくらいだった。
『そうなの? 僕から見たら君はまるで『正義のヒーロー』みたいに見えるけどね』魚は星を茶化すような言いかたでそう言った。
「それはあなたが運動しなさすぎなだけよ。ちょっとは外に出なさい。楽しいから」
星は河原の上の窪みのような場所を軽くジャンプしてやり過ごす。どうやら星は早くもこの悪路なコースに慣れてきたようだ。