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 星は上半身を起こして、河原の上に座り込む。そして青猫に向かって両手を広げた。

「ほら、もうあなたを捕まえようなんて思ってないよ。安心して」

 星はにっこりと微笑むが、青猫の態度は変わらない。いや、青猫は星から少しづつ距離をとるように後ろに下がっている。

「あ、待って、行かないで。ほら、傷の手当てをしないといけないでしょ? 手当てが済んだら、私はどこか遠くに行くから、あなたのそばから離れるから、ね? お願い。だからまだ、今はここにいて」

 しかしそんな星の願いは青猫には届かなかった。

 青猫は星が自分を追ってこないと確信したのか、それとも怪我で正面から戦うのは不利だと認識したのかわからないが、星との距離がある一定の距離を越えた瞬間、その背後にあった小川の川沿いの、その『下流域』に向かって全速力で駆け出して行ってしまった。

 星はそれを見て立ち上がると、すぐに青猫を追いかける。

 河原の先では青猫が地面の上を不規則な軌道で駆け抜けていた。途中で転んだのか、青猫の体は不自然な態勢になっている。青色の夜の中に青猫の美しい毛並みが溶けるように混ざり込んで、星の視界から消えていく。

「待って! 青猫」

『待つのは君だよ。荷物を放っておくつもりかい?』

 魚の声を聞いて、星は足を止める。立ち止まった星は青猫のほうを見たり、荷物のほうを見たりしてあたふたしている。

「どうしよう? 魚。ねえ、私、どうしたらいい?」

『どうって、そりゃ追いかけるしかないんじゃない?』

「追いかける? でも、そうするとバックが?」

『持っていけばいいじゃない』

 そっか。そうだよね。持っていけばいいんだ。軽いパニック状態になっていた星は魚の提案を聞いて冷静さを取り戻した。

 星はすぐにボストンバックを置いた場所に駆け寄ると、バックをいつもとは違って、片方の肩にではなく、走ってもバックが落ちないように斜めにかけた。

「青猫がよく見えないから、案内お願い!!」

 星は叫ぶ。

『了解。とりあえず、しばらくは真っ直ぐでいいよ』

「わかったわ!」

 そう魚に返事をしているときにはすでに、星は河原の上を全速力で駆け出していた。


 第一幕 終演

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