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407 はいらずの森

 はいらずの森


 これは力なんかじゃない。これは呪いだよ。血の呪いなんだ。

 災いを封じるためのお供え物。それが占いの血の力の正体なんだと思う。


 思っていた以上に夜のはいらずの森の中は真っ暗だった。(本当に怖かった)それに森の中の寒さも予想していたよりもずっと寒い。(もっと厚着をしてくればよかった)

「なあ、一応、聞いておくけどさ、本当にこの先であってるのかよ。ずいぶん歩いたけど、今のところ、森の中になんにもそれらしいものは見えないぜ」少し先を歩いている仁くんが言う。

 仁くんの背中はよく見えない。白いロープが伸びている先に咲が照らしている懐中電灯の丸い灯りの中に仁くんはいる。

 がさがさと草木を踏みながら歩く仁くんの足音が聞こえる。

「道はあってるよ。今のところ、森の中は地図に描いてある通りだし。間違いないと思う。ただ……」

「ただ、なんだよ?」

 仁くんは振り返って咲を見る。(久しぶりに仁くんの顔が見られて嬉しかった)

「えっと……、なんでもない」とにっこりと笑って咲は言った。

「あった。あそこだ」

 はいらずの森の奥にはひっそりと祠が建てられている。朽ちている小さな祠だ。その祠はとても禍々しい雰囲気を纏っている。(思わず吐きそうになってしまうくらいにひどく澱んでいた。巫女である咲だけでなく仁くんも気持ちが悪くなるくらいだった)

 この祠が咲の目的の場所だった。

「奥に洞窟があるな。あれが死者の国への入り口なんだな」

「うん。そのはずだよ。文献の通りに(咲は探しもののあとで、あのとき見つけられなかった文献が一冊あったと仁くんに嘘をついていた)祠があったし、洞窟もある。あってるよ」

「本当かよ? 咲のあってるはあんまり当てにならないからな」と笑いながら仁くんは言った。

「そんなことないよ。それに実際に行ってみれば、あってるか間違っているかすぐにわかるよ」咲は言った。

「確かに知りゃそうだ」

 咲と仁くんは洞窟に入る前に腹ごしらえをすることにした。祠から少し離れた場所で携帯用の火を焚いてお湯を沸かして、カップラーメンを食べた。(美味しかった)

「これが俺たちの最後の食事になるかもな」冗談ぽい口調で仁くんは言った。

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