399 大きな魚 あなたに届いたらいいな。
大きな魚
あなたに届いたらいいな。
あなたは運命という言葉を信じますか? 私は運命という言葉を信じません。だって運命が初めから決まっているなんて、もしそれがとても悲しい運命だったら、本当に辛い運命だったとしたら、そんな運命が起こると決まっているとしたら、とてもつまらないと思いませんか? 悲しいことだって思いませんか? そんな運命なら『力ずくてぶっ壊してやる』ってそう思いませんか?
私ならそう思います。
どうしよう? 何度やっても結果が変わらない。
春原咲は正座のままで、床の上にひたいを当てるようにして目を閉じる。おかしい。この占いは絶対に間違っている。でも、……。
もう一度だけやろう。もう一度やって、今度も同じ占いの結果が出たら今度こそ『その未来』を信じよう。
頭を上げた咲は真剣な顔をしてもう一度占いをする。
咲の座っている床の前には炎がある。小さな炎だ。咲はその炎の中に木の札をくべる。榊の葉を炎の中にくべる。それから咲は立ち上がって舞を舞う。神様に奉納するための舞だ。咲は赤と白の巫女服を着ている。その上に今日は儀式用の羽織を纏い、頭には飾りをつけている。場所は神社の境内の中。咲の生まれた家である『春原神社』の境内の中だ。
春原神社は古くて小さな(有名でもない)名もない忘れられてしまったような神社だったのだけど、ひとつだけとても強い力を継承している神社でもあった。
その強い力とは『占い』だった。未来を知ることができるのだ。