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「いい、よく聞きなさいよ」
『うん』魚は意識を星の言葉に集中する。
「それは私が『自分でそう生きる』って決めたからよ!」
星はいつものように胸を張って魚に答えたが、星の返答を聞いた魚は明らかに落胆していた。それはつまり星への期待の裏返しだった。
『君、いったいなにを言っているの?』今度は魚のほうが呆れた声で星に言った。
「なにって、さっきの質問の答えよ、答え。聞いてきたのはあなたでしょ?」星は魚に文句を言う。
『はぁ、もういいよ。君に期待したぼくがばかだったんだ。答えは自分で探すことにするよ』
魚は力のない声でそう言った。もしかしたらそれは実体化をしたせいで、魚は本当に疲れているのかもしれない。
「ちょっと、なに勝手に話を終わらせようとしてるのよ? 私の話はまだ終わってないのよ」
話を終われせようとした魚を星は捕まえる。
『なに? まだ続きがあるの?』
「ええ、あるわ」
ごほん、っと星は咳払いをしてから話し出す。
「私ね、海がいなくなったときにね、決めたんだ。もう我慢しないって、わがままになるんだって、そう自分で決めたの」
『それ、いったいなんの話?』魚は星に質問する。
「私の覚悟の話よ。海がいなくなってから、そう決めたの。自由に生きようって。自分のやりたいことをやって生きていこうって、そう決めた。そうして、海を探しに行って、海を探し出したときに、笑って海と再会しようって、それが私の本当に叶えたいお願いだって気がついたから、だから、そう自分で決めたの」
『よく理解できないけど、君が決めたんなら、それでいいんじゃない?』
魚は特に興味もなさそうに言う。だが、その魚の言葉を聞いて、星はやけに嬉しそうな顔をした。
「ふふ。よくわかってるじゃない。そうなの。私が決めたから、それでいいのよ」
星は笑う。
その笑顔の理由が魚にはよくわからなかった。