384 この世界から消えてしまったもの 大丈夫。怖くありませんよ。
この世界から消えてしまったもの
幽霊たちは歌が大好き。
幽霊たちは遊びが大好き。
幽霊たちは眠ることが大好き。
幽霊たちは笑うことが大好き。
大丈夫。怖くありませんよ。
「本当にまた映るかな?」
「映るよ。えっと、ほら。映った。映った!」
古い四角い形をしたテレビのダイアルを回している二人の女の子の幽霊がいる。
「あの見えますか? 聞こえますか?」
すると砂嵐の画面の中にうっすらと映っている誰かがなにかを言っている小さな声が聞こえた。
「なんて言っているんだろう?」
二人はテレビに耳を(くっつくくらいに)近づける。
「……あなたたちは、誰?」
そんな声が聞こえる。
「聞こえた!!」
「うん。聞こえる」
二人の幽霊の女の子は笑顔になる。
「あの初めまして。私は笹枝まめまきって言います。幽霊です」
大きめの緑色のロングコートを着ている幽霊の女の子が言う。
「初めまして。私は浮雲ひまわりです。幽霊です!」大きめの黄色いロングコートを着ている幽霊の女の子が言う。
二人はテレビの画面に映っている人影に挨拶をする。
「あの、もしよかったら私たちとお友達になってください!!」
とそのあとで(相手の返事も聞かずに)幽霊の女の子たちは声を揃えてそう言った。