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葉ちゃんは眼鏡をかけている。宝もよく知ってる愛用の黒縁の眼鏡。
さらさらの綺麗な黒髪は短くて耳が隠れるくらい。その耳にはなにもつけていない。(葉ちゃんはアクセサリーはあまり好きではないので、つけないことが多かった)
白いぶかぶかのシャツにお気に入りの黒色のスカートを履いている。
葉ちゃんは可愛いものが好きで、可愛い格好が好きで、服も女の子の服をよく着ていた。(周囲の人たちから変に思われるので、隠れてこっそりときていた)だけどこの街には人は(たぶん、見渡す範囲の景色の中には)いないから葉ちゃんは(いつものように夜の中ではなくて)お昼からどうどうと自信を持って自分の大好きな服を着ていた。
足元は大きめの焦茶色のブーツ。
「葉ちゃん」と宝は言った。
すると声に気がついて、振り向いて、そこに宝の姿を見て(大きな目を丸くして)すごく驚いてから、すぐにいつもの笑顔になって「やあ、しばらく」といつもの声で葉ちゃんは言った。
もう走り出していた宝は白いスポーツバックを地面の上に放り出して、そのまま葉ちゃんの小さな体に(子供みたいに)抱きついた。