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散歩の途中、文は美波が焼いてきてくれたクッキーを咲子と一緒に食べた。
夕焼けの海が見える。
あと二時間もすれば、夜になり、星が見えるようになる。
文が美波と星の絵の話をしていると「私も星が見たい」と咲子が言った。
文と美波は咲子とタローと一緒に星を見るために海へ行くことにした。
でも遊び疲れていたのか、夜になって星が見えるころになると咲子は一人で眠ってしまった。
そんな咲子を見て文と美波は笑い合った。
星を見たあとで、文は咲子をおんぶして、美波はタローの紐を持って、白波の家に帰った。
美波を望月の家まで送っていく途中の道で、文は美波に結婚してくださいと言った。
そんな文の突然の言葉を美波は、はいと(文の手のひらに指で書いて)言って受け入れてくれた。
夏が終わる前に文は星の絵を完成させた。
その絵画に文は『あなたの声を聞かせて』という題名をつけた。
星の絵にそんな題名をつけることを美波に話すと美波は笑って、
べつにいいよ。
とスケッチブックに書いて言ってくれた。
夏の星を描いた『あなたの声を聞かせて』は文の生涯の代表作となった。