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 文は白波の家の自分が借りている部屋に久しぶりにきちんとした絵を描くための準備を整えた。

 試しにまず咲子にお願いをしてモデルをしてもらったのだけど、咲子の絵を描くことはできなかった。(そのことでやる気満々だった咲子をまた怒らせてしまった。アイスを奢って許してもらった)

 次に美波の絵を描こうと思った。

 でもやっぱり描けなかった。

 だめか。

 と天井を見ながら文は思った。

 それから目を閉じて文は心を落ち着かせる。

 音が消えていく。

 いろんな思いも心の中から消えていく。

 残るのは星。

 あの夜に見た星の光だけだった。

 文はゆっくりと目を開ける。

 時刻は夏の真昼。

 世界は眩しい太陽の光に満ちている。

 文は大きなキャンパスにクレパスで絵を描いていく。

 初めの線が描けたことで、文は自分の指早咲が震えているのを感じた。

 描ける。

 二つ、三つと、線を描く。

 動き出した指は止まらない。

 暑い。

 汗をかいている。

 クレパスを持つ指が滑る。

 畳の上の影が形を変えていく。

 いつの間にか、太陽は沈もうとしていた。

 ふぅーと息を吐く。

 開けっぱなしの襖の間から外を見ると、世界は真っ赤な色をしている。

 夕焼け。

 時計を見ると、時刻はもうずいぶんと遅い時間だった。

 文はキャンパスに視線を戻す。

 そこには夏の星空がある。

「描けた」

 と文は言った。

 それから少しして自分が泣いていることに文は気がついて驚いた。

 美波に会いたいな。

 と文は思った。

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