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「小道さん。朝顔と紫陽花がいなくなっちゃったんです」

 雨の中で育は言った。

「知っています。少し前に私のところにも連絡が入りました。だから、この場所にきてみたのですが、……二人はどうやらここにはいないようです」

 小道さんは言った。

 小道さんのかけているメガネに雨の雫がたくさん、たくさんついていた。この神社の軒下が二人の秘密基地であることを知っている人は限られていた。(二人の両親である木ノ芽さん夫妻はこの場所を知っている)

 育はこの場所を朝顔から教えてもらったのだけど、小道さんも二人のどちらかに(あるいは二人ともに)この場所を教えてもらっていたようだ。

 それは二人の小道さんに対する信頼の証だった。

「野分さん」

「はい」育は答える。

「この場所以外で、二人のいきそうな場所。知りませんか?」小道さんは言う。

 育はそのことばかりをさっきからずっと考えていた。

 でも、そんな場所、どこも思いつかなかった。

「わかりません」

 育は言う。

 すると小道さんはゆっくりと育の前まで歩いて近づいてきた。育はその場所から動かずに、ずっとそんな小道さんの姿を見ていた。

 小道さんは育の両肩を掴んだ。

 そして「どんな些細なことでもいいんです」と真剣な表情で言った。

 育は小道さんにそう言われて、二人の言動をできる限り思い出そうと思った。

 降る雨の音が、なぜかとても強く聞こえた。

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