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361 もう、さよならの時間だね。(もう、暗い闇の中には帰らないでね)

 もう、さよならの時間だね。(もう、暗い闇の中には帰らないでね)


 毎日を生きることは、少しずつ死に近づいていく行為なのだと、……中等部時代の三枝輪廻は思ことが、よくあった。


 焼肉屋さんの外に出ると、雨はいつの間にか止んでいた。

 夕ご飯のあとで暗くなってきた東京の空の下で、雨上がりの近くにあった小さな公園に二人は移動をした。

 そこは林檎が野宿をしていた公園に、どこかよく似ていた。

「こういうところで野宿するのも楽しそう」

 雨を拭ってからブランコに座って、輪廻は言った。

「別に楽しい生活じゃないよ。寒いし。虫もいるし」

 ブランコの近くにある手すりの上に雨を拭ってから座って(林檎は最初、制服が汚れるからと遠慮したのだけど、輪廻がクリーニングに出すからいいよ、と言った)林檎は言った。

「そうなの?」

「そうだよ。輪廻は公園の丸い遊具の中で、暗い夜を一人ぼっちで過ごしたことがないから、そう思うんだよ」と星と月のない夜を見ながら、林檎は言った。

 輪廻は立派なお家がある輪廻はすごいよ。正直なところ羨ましい。と言う林檎の言葉を思い出した。

「うん。確かにそうかもしれない」輪廻は言う。

 そう言ってから輪廻はブランコから降りた。久しぶりのブランコは、なんだかちょとだけ、子供のころに戻れたみたいな気持ちがして、楽しかった。

「だからさ、帰る家のある『輪廻はしっかりと自分を守って』さ」

 そこで林檎は輪廻に目を向けた。

「私みたいに暗い夜の中で、迷子になったりしないでね」そう言って、林檎は優しい顔でにっこりと笑った。

「うん。ありがとう」

 輪廻は言った。


「ねえ、林檎。今日も家に泊まって行きなよ」

 公園から駅までの帰り道で、輪廻は言った。

 このまま行くと、六本木駅のところで、林檎と別れることになってしまうような、そんな気がしていたからだった。(林檎はお金を持っていないようだけど、定期券のようなものは、所持しているようだった。実際に林檎は電車には輪廻のお金ではなくて、自分の定期入れを使って電車に乗っていた)

 その申し出は、たぶん断られてしまうのではないか、と輪廻は思っていた。

 でも、「明日は学校があるけど、……いいの?」と林檎は言った。

「もちろん。いいよ」と輪廻は言った。

「私は学校に行くけど、林檎は家で、私の帰りを待っていてくれればいい。そして、学校が終わったらさ、今日みたいにまた制服デートをしようよ。放課後の学校帰りの、……仲のいい友達同士みたいにさ」

「友達?」

「うん。友達。私たち、もう……友達だよね?」と輪廻は言った。

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