表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/447

31

 星は肩に担いでいたボストンバックを地面の上に勢いよく下ろすとバックを開けて、その中から急いで小さなペンライトみたいなサイズの懐中電灯を取り出した。

『なにをするつもりなの?』

「なにって決まってるでしょ? 海を助けに行くのよ。そのために私はこの森にやってきたんだからね」

 星は懐中電灯のスイッチをつけたり消したりして、きちんと明かりが灯ることを確かめる。時折、星の周囲を冷たい風が吹き抜けた。その風に髪の毛がゆれてすごく鬱陶しい。

 先ほどよりもその風は冷たく感じる。夜がいつの間にかとても深くなったような気がする。星は近くにある大きな木の陰に移動する。

 頭上の大きな枝葉やその巨木が星を風や闇や孤独から守ってくれているが、それも限界があった。夜はどんどん暗くなる。風はその勢いを増していく。空も大地も、星の周囲のすべてが真っ暗な色で塗りつぶされていく。

 風が強く吹いてきた。星の全身に凍りつくような冬の風が吹き付ける。

 今なら澄くんの言っていた森が閉ざされる、という言葉の意味が理解できるような気がした。

 確かに今、森は閉ざされようとしている。体がとても冷たい。夜が暗い。身動きなんて全然取れない。今私の周囲を包んでいる闇は、私の知ってる都会で見る闇とは違う、全然別の『なにか』だった。

『いいかい、よく聞いて。今君はここを動くべきじゃない。いや、動いてはいけないんだ』

「それは違うよ。今、私はここを動かなくちゃいけない。それが私のやるべきことなんだ」

 星は魚の言葉に耳を貸さない。星は背中を大木の幹に預けてその場にしゃがみ込むと、少しの間、目を閉じて気持ちを落ち着かせる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ