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「ちょっと二人で鏡の前に並んでみようか?」
輪廻は言う。
「うん。いいよ」林檎は言う。
輪廻と林檎は、二人並んで大きな鏡の前に立ってみた。すると、やっぱり二人はとても、よく似ていた。(とくにお風呂上がりで、林檎が髪型をツインテールにしていなかったことが、原因の一つでもあった)
それから、二人は、まだ眠る時間まで少しだけ時間があったので、二人で、テレビを見ることにした。(それは林檎が、輪廻の部屋にある大きなテレビの画面にすごく興味を示したからだった)
テレビをつけると、「なにこれ? すっごく綺麗!」と言って、林檎はことのほか、輪廻のテレビを褒めてくれた。
「なにかゲームでもする?」輪廻は言った。
「ううん。テレビでいい」林檎は言った。
林檎はそれからテレビのリモコンを使って、番組を一つずつ順番にテレビの画面に映しながら、変えていった。
そして最後に林檎は、その時間にやっているニュースの番組にテレビの画面を固定した。
そんなことを林檎がしている間に、輪廻はキッチンで二人分のコーヒーを淹れていた。
「どうぞ」輪廻はコーヒーをテーブルの上に置いた。
「ありがとう」林檎は笑顔でそう言った。
林檎はテレビの近くに座って、輪廻はいつもの自分の指定席であるソファーの上に腰を下ろした。
二人の見ているテレビのニュースでは、『昨晩、〇〇駅のホームに男性が飛び込み、事故が発生して、電車が〇〇時間、運転を停止させました』とか、『昨日、〇〇町にあるマンションの〇〇階から、子供が飛び降りて、大怪我を負う事故がありました』とか、そんなあまり明るくない話題のニュースばかりがやっていた。
「……テレビ、つまんないね」輪廻は言った。
「うん。そうだね」
そう言って、林檎はテレビの電源をリモコンのボタンを操作して落とした。
すると、もともと電気をつけていなかった輪廻の部屋は(輪廻はいつも、夜の時間に部屋の電気をあまりつけない生活をしていた)大きなテレビの明かりが消えたことで、また薄暗い夜の闇に閉ざされることになった。