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347 空中遊泳 ……暗い夜の中を泳ぐ。

 空中遊泳


 ……暗い夜の中を泳ぐ。


 輪廻のマンションの前にたどり着くと、林檎はぽかんとした表情をしながら、地上からの明るいライトに照らされている、その大きな乳白色のビルを見上げた。

「……ここが輪廻のお家なの?」

「そうだよ」

 それだけ言うと、輪廻はマンションの入り口に向かって移動を始めた。

 でも、林檎はなんだか萎縮してしまって、その場にじっと立ったままでいた。

「いこ」

 後ろを振り返って輪廻は言った。

「……うん」

 そう言って、林檎はようやく輪廻のあとについて、早足で行動を開始した。

 輪廻がマンションの入り口フロアで暗証番号をを押してガラスドアのロックを解除すると二人はマンションの一階を移動して、エレベーターに乗って上の階に向かって移動を始めた。

 輪廻の押した番号は十六だった。

 マンションの十六階。

 それはこのマンションの最上階の数であり、そこが同時に輪廻の暮らしている家のある場所だった。

「もしかして、輪廻ってお金持ちのお嬢様なの?」

 一階にあるエレベーターの中で、林檎が輪廻にそう言った。

 でも、輪廻は無言のままだった。

 なので、それから林檎は黙ってしまった。

 静かなエレベーターの中で、それから二人はずっと無言のままだった。

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