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「うーん、ほかの仕事をしたことがないから比べられないんだけど、仕事自体はとても楽しいよ」
「門番ってどんなことするの?」
「どんなことって、門の番をするんだよ。門を勝手に通って森の奥に行ってしまう人がいないように注意するのが僕の仕事さ」
確かに澄くんは星が門に触れようとしたとき、それはだめだよ、と声をかけてきた。思えばあれが星と澄くんの初めての出会いだった。ついさっきの出来事なのに、なんだか妙に懐かしい感じがする。
『あんまりそういうこと聞くの、感心しないな。澄に嫌われちゃうかもよ』
魚が硯に忠告をする。おそらくこの辺でプライベートな内容に触れる会話は切り上げろと言いたいのだろう。しかし星は魚の忠告を無視した。これくらい別にいいじゃない、と星は心の中で思っている。
星は少しだけ澄くんに寄り添うように体を近づけた。澄くんが青猫を連れて来て以来、二人の距離は開きっぱなしだった。それでも、お互いの体がくっつくまでは近づけない。青猫が澄くんの肩の上にいるからだ。