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「ちょっとは手伝ってよ」
その人が言った。その声は男の子の声だった。
その声に反応したのか、星の持っている鳥かごの中の鳥が小さく鳴いた。その鳴き声を聞いて、その人は自分を見ている星の存在に気がついたようだった。
「あ」
と言う声のあとで、「こんにちは」とその人が言った。
「こんにちは」
星はその人に挨拶を返した。
星は鳥かごを道路傍において、その人の姿を正面から見つめた。
その人は背の高い、ひょろっとした感じの、優しい表情をした、(ここが一番重要だけど)とてもかっこいい男の子だった。
年齢はたぶん、星と同年代か、星の一つか二つ下くらい。
おそらくだけど、年上ということはないと思う。なんとなくだけど年下という感じのする、男の子だった。
男の子はなにも言わず、なんだかすごくびっくりしたと言う顔つきで、星の顔を見つめていた。
星は切ったばかりの髪を、その男の人にじっくりと観察されているような気がして、なんだかすごく恥ずかしくなった。
「えっと、私、隣の家に住んでいるものなんです」と星は言った。
「名前は星って言います。本田星です」
「……ほんだ、ほし、さん」かっこいい男の子はそう言った。
「はい。本田星です」と星は言った。
「あ、えっと僕は澄って言います。山田澄です」と澄は言った。
「やまだ、すみさん、ですね」と星は言った。
それから星は愛想よくにっこりと澄に笑いかけた。
すると澄の顔は真っ赤になった。




