228 エピローグ 二人の出会い 私たちはずっと、ずっと友達だよね。
エピローグ 二人の出会い
私たちはずっと、ずっと友達だよね。
本田星 十歳 小学五年生
山田海 十歳 小学五年生
「……くしゅん!」
真夏だというのに、道端で星は大きなくしゃみをした。
誰かが星の噂話をしているのかもしれない。
星はその両手に抱えるようにして大きめの白い鳥かごを持って、街の中を歩いていた。白い鳥かごの中には一羽の白い小鳥がいる。
それはずっと以前から星が欲しかった小鳥で、その小鳥を星はある理由によって、思い切って購入することにしたのだ。
その理由は現在の星の髪型に由来する。
星はずっと大切に伸ばしていた腰のあたりまであった黒髪を、今日、ばっさりと美容室で切ってきた帰りだった。
今の星の髪は耳まで出るショートカットで、鏡の中に写っている自分は髪を切る前の自分とはまるで別人のようだと星は思った。
なぜ髪をばっさりと切ることにしたのか、その理由自体は絶対に秘密だが、その髪を切った代わりとして、星は決心をして、近所のペットショップで鳥を購入したのだった。
星は自分の選択に満足していた。
気分がすっきりして、なにもかもが新鮮に見えた。(それは強がりではない。その証拠に星の街を歩くリズムはとても軽快だった)
星は自分の家の前まで戻ってきた。
すると、ちょうど今、出発したばかりの一台の大型トラックが星の横を低速で通って行った。トラックのコンテナには『引っ越しセンター』の文字があった。(文字と一緒にかわいい猫の絵が描かれていた)
星の隣の家の前に人影があった。
星の隣の家は最近、お引っ越しをして空き家になったばかりで、その家にまた違う家族が引っ越してきたようだった。
その人はきっと、その新しい星のお隣さんだろうと星は思った。
星はその人の姿をよく見ようとしたが、鳥かごが邪魔で前がよく見えない。それにその人も一人の手で持てる範囲の引っ越しの荷物を家の中に運んでいて、門のところを出たり入ったり、忙しそうに移動を繰り返していた。




