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「すごいや星。もう仲良しになったんだね」
青猫は星の顔から肩、そして頭の上と順に移動していく。星の表情は硬い。
「……澄くん、その、一生のお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
「うん、いいよ。僕にできることならなんでも言ってよ」澄は胸を張って星に答えた。
そのあと、なんとか青猫を澄くんにとってもらった星はようやく体が動くようになった。二人は会話をしながら森の中の道を再び歩き始める。
「ごめん星。猫、苦手だったんだね」
澄くんに再度捕まった青猫は最初は澄くんに抵抗していたが、そのうち諦めたのか今は初めに見たときと同じように体を丸くしておとなしく澄くんの腕の中に収まっていた。
「ううん、いいの。別に気にしないで」そう言いながらも、星は先ほどよりも若干澄くんと距離を開けて歩いている。
「お詫びにそのバック、僕が持つよ。なんか重そうだし」
澄くんは片手を星のほうに差し出しながらそう言った。
「ありがとう澄くん。でも、大丈夫。こう見えても私、体力には自信があるの」
「そうなの?」澄くんは残念そうに手を引っ込める。
「うん。私、趣味がランニングなんだ。毎朝走っているんだよ」
「へー、すごいね。僕なんてずっと寝てばっかだよ」
澄くんはそう言いながら視線を制服のスカートからはみ出している星の自慢の足に向ける。いやらしい気持ちからではないとわかっていはいるのだけど、そうまじまじ見られると星は少し恥ずかしくなってしまう。
「澄くん。女の人の足をそうじっと見ないの」
「え? あ、ごめん。つい」
澄くんは頭をかきながら星に謝った。
「でも、猫が苦手なんて珍しいね。なにか理由でもあるの?」
「うーん、自分でもあんまり覚えてないんだけど、小さいころに引っ掻かれたらしいのよ」
「猫に?」
「うん」
「それで嫌いになっちゃったの?」澄くんは信じられないと言った表情をする。
「もちろん、それだけじゃないわよ。かじられたりもしたらしいし……」
星は必死に弁明するが、澄はあまり納得していないようだ。
「こんなに可愛いのにもったいないね」
澄くんは青猫の頭を撫でた。すると案の定、青猫は澄くんの腕の中でじたばたと暴れ出した。