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部屋に戻ると、海は制服から真っ白なパジャマに着替えをして(いつもの白いジャージではない)それからベットの中に潜り込んだ。
海はベットの中でずっと、星の残した(海が受け取った)小さな黄色いラジオを、ぎゅっと胸のところで抱きしめていた。
そうすれば、もしかしたら夢の中で星と再会できるかもしれないと思った。
でも、実際にはそんなことはなかった。
星と追いかけっこをして、久しぶりに全力で走った海はとても疲れていたのか、そのまますぐにベットの中で眠ってしまった。
夢はなにも見なかった。
朝、海が目を覚ますと、世界はなにも変わっていなかった。
海は冬の森の中にいた。
その森の中にある小屋の中で生活をしていて、その小屋の中にあるベットの上で海は目を覚ました。
ぼんやりとする頭の中で、……そうか、私、街から逃げ出してきたんだ、とそんな当たり前のことを久しぶりに思い出すことができた。
海は「うーん」と言ってベットの上で両手をあげて背筋を伸ばすと、それからベットから抜け出して、パジャマから学院の制服に着替えをした。
窓越しに窓の外をみると、外の天気は相変わらずどんよりとしたままだった。今は雪は降っていないが、今にも降り出しそうな天気のままだ。
海は、これは急いだほうがいいかな? とその天気を見て思った。
海は顔を洗うために、自分の部屋をあとにした。
リビングにはすでに澄と渚がいた。
「おはよう。よく眠れた?」
リビングに入ってきた海を見て澄が言った。
「おはよう、海。今日は少しお寝坊さんだね」とテーブルのところにある椅子に座っている渚が言った。




