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 渚はその星の残した三つのものをテーブルの上に慎重においた。

 星は自分のバックを澄に投げるようにして預けていたのだけど、そのバックは二人を待っている間に、きらきらとした光の粒子になって、消えてしまったということだった。

 そしてこの三つのものだけは、消えずにその場に残っていたらしい。

 その三つのものとは、

 小さな可愛らしい黄色いラジオ、

 小さな木製の箱、

 そして、少し大きめの中世の古書のような見た目をしたとても古い黒い本だった。

 テーブルの上にあるその三つのものを三人は椅子に座ってじっと見つめた。

「三つあるから、一人一つずつってことでいいよね」と渚は言った。

「いいよ」

「わかった」

 と海と澄は答えた。

「じゃあ、海からどうぞ」と渚は言った。

 海が澄を見ると、澄はこくんと頷いた。

 海は三つのものを見た。

 最初に気になったのは中世の古書のような古い本だった。その本に海は見覚えがあった。その本は森にやってくる前に、海が星に手渡した(その本の中にはさよならの手紙を入れていた)本だった。

 その黒い本はずっと昔から海の実家にあったもので、海は幼いころからその本が好きだった。(中の記述は黒魔術だとか、錬金術だとかの、いわゆるオカルト本のようなものだ)

 中身はでたらめだったけど、外見とか雰囲気とかが好きだった。海はもともと少しこうしたオカルト趣味があって、それに本も大好きだった。(本を中身ではなく外見で選んで買うことも多かった)

 星に譲ったはずの黒い本は、海のもとまで戻ってきてしまった。

 だからこれは私の本なのかな? と海は思った。

 そう思って海は黒い本い手を伸ばしたが、途中でその手を止めた。

 ……なにかが違う。と海の心が囁いていた。

 海はそっと自分の隣に座っている渚を見た。

 すると渚は、そう。その通り。君の心の声はなにも間違っていないよ、と言いたげな、にんまりとした表情をしていた。

 海は手を動かして、黒い本ではなく黄色いラジオを手に取った。

 そのラジオはなぜかもう十年くらい愛用している品のように、ぴったりと海の手のひらに吸いついた。

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