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 星の体に変化が起き始めたのはそんなときだった。

 海の膝の上にいる星の体は、その全身が眩しく、きらきらと輝き始めて、美しい無数の光の粒子に、その存在が変化しようとしていた。

 星はそんな自分の変化に驚くこともなく、じっと海を見つめていた。

 海も、同じように星の変化を驚きを見せないまま、その現象を黙って受けいれるようにして、自分を見つめる星の大きくて透明な目をじっと見つめ返していた。

「ありがとう」と星は言った。

 海はぎゅっと星の手を強く握った。

 星が消えてしまうその瞬間まで、ずっと、星の手を握っていようと海は思った。

「……私、海のこと大好きだよ」

 そう言って星はにっこりと笑った。

 海はずっと泣いていた。でも、星はお別れのとき、最後まで海に涙を見せることはなかった。(それは、さっきお別れの前に十分すぎるほど、星が泣いたということも理由にあるのかもしれない)

 きっと星は最初から、最後は笑って私とお別れしようと決めていたのだと海は思った。

「……私も、私も、星のことが大好きだよ」と海は言った。

 すると、その言葉を聞いて、少し照れながら、満足そうに星は頷いた。

 それが二人が交わした最後の言葉だった。

 森の中にいなくなった山田海を追いかけて、街から森までやってきた本田星の冒険はここで終わった。

 海にもう一度会うという目的を果たした星は、海の膝の上で光になって、空中で霧散して、拡散するようにして、冬の透明な風に運ばれて、真っ白な色をした冬の空の中に消えてしまった。

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