198
澄くんの家で、ちょっと長く休みすぎたのかもしれない。
いつの間にか体のあちこちの筋肉が、少し硬く固まってしまっていた。やっぱり定期的に動かさないと筋肉はしなやかに動いてはくれないのだ。
星は相変わらず美しい海のフォームを遠くから見て、少し反省する。
海の走っているコースの先に崖がある。
海はその崖の横の森に沿って、大きく左に曲がるようにして、雪の上を走り抜けていく。
海はペースを落とさない。
まるで試合のときのように、動きに淀みがない。迷いがない。
星は感心する。
海。……相変わらず綺麗なフォームをしている。(私の理想のフォームだ)
海、あなた知らないでしょ?
私の走りかたは全部あなたの真似事なんだよ。私の手の振り方も、足の動かしたかも、息の吸いかたも、全部が全部、海の走りかたをお手本にしたんだよ。
星は海とほとんど同じフォーム、同じコースで、崖のコーナーを(星の場合は、少し速度が落ちたけど)曲がっていく。
海との距離は縮まらない。(むしろ少し広がってしまった)
このままでは海のところまでたどり着けない。
星は焦る。
「海!! なんで逃げるの!!」星は遠くにいる海の背中に向かってそう叫んだ。
「あなたが、追いかけてくるからよ!!」
すると海は少しだけ後ろを振り向いて、星に負けないくらいに大きな声で、星に向かってそう言った。




