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これまでの道中、とても大変だったけど、星は森にたどり着くことができた。(それは奇跡と呼べるくらいすごいことだ)
この森の奥に海がいる。もうすぐ私は海に会えるんだ。
そう考えていると星の表情は明るくなる。
すると自然とその足取りも軽くなるのだから不思議だ。
『随分ご機嫌だね。でも、気を付けて。この森は君が考えているほど甘い世界じゃないよ』
突然、星の頭の中にそんな声が聞こえてきた。
しかし星にはまるで動揺した様子が見られない。それがさも当然のことのように、星はその声に対応した。
「そう何度も同じ忠告ばかりしないでよね。私達は契約をして、正式なパートナーになったんでしょ? ならもっと私のことちゃんと信用してくれてもいいんじゃないの?」
その光景はどこか滑稽でもあった。他人から見れば、星が自分の頭の中にいる空想の住民とおしゃべりをしているようにしか見えないだろう。
『君は無茶ばかりするからね。ここまでの道中、僕がどれだけ心配しながら君の行動を見守っていたか、想像できる?』
それは子供の声だった。声から受ける印象は星よりもだいぶ年下に感じるが、その言葉遣いは星よりも随分しっかりしている。
「でも、ちゃんと森に着いたでしょ?」星は自信満々で返事を返す。
『それは僕の忠告のおかげさ。君のほうこそもっと僕のことを信用してほしいものだね』それに対して声はつねに冷静沈着だった。