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 星は森の道の途中にある大きな木に背中を預けるようにして、そこで一冊の黒い本を読んでいた。星のそばに澄の姿はない。少し用事があるからといって星を森の道の途中に待たせて一人でどこかへ行ってしまった。すぐに戻るとは言っていたけど、あれから結構時間が経っているのに澄はまだ帰ってこない。

 ときどき、冬の冷たい風が星の周囲を吹き抜ける。そのたびに星は本から顔を上げて、そっと空に浮かんでいる大きな白い月の姿を不安そうな顔で見つめた。

 白い月が出ると不吉なことが起こる。森が閉ざされてしまう。そう澄くんは言っていた。森が閉ざされると、どうなるのだろう? 白い月が空に浮かんでいると、森にどんな不吉なことが起こるというのだろうか?

 ……海は無事だろうか?

『大丈夫だよ。澄は心配してるようだけど、月が出ているくらいなんともないよ』

 魚が闇の中から顔を出して、そう星に告げた。

「でも、澄くんはとても不安そうな顔をしていたわ」

『君は僕よりもあの澄っていう少年のほうを信じるのかい?』魚が意地悪く問いかける。

「別に魚のことを信じていないわけではないよ。あなたの言っていることは、今のところ『嘘』はないし、なにより私たちは契約によってお互いを縛りあっているわけだしね。でも、澄くんがなんの根拠もなくあんな顔をするとは思えないの」

『君と澄は出会ったばかりじゃないか。君は澄のことをなにも知らない。澄も君のことをなにも知らない。それなのにどうしてそんなに彼のことを信じることができるのか、僕には理解できないよ』

 魚の言ってることは、確かに間違ってはいない。実は星にもなぜ自分がこんなにも澄くんのことを信用しているのかよくわからないくらいだ。でも、それでも星は澄くんを信じることができる。それは紛れもない真実だ。

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