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星がそんなことを考えながら青猫を見ていると、青猫はじっと、澄くんの腕の中から星のことを見返した。
準備を終えた二人は(ストーブの火を消したり、きちんと家の戸締りをしてから)澄くんの家の外に出た。(外はとても寒かった。今は冬だ。その冬の寒さを久しぶりに星は思い出した)
澄くんは玄関のドアに鍵束にある大きな鍵で、しっかりと鍵をかけた。
二人は家の前で立ち止まって、二人で一緒に空を見上げた。……なにもない真っ白な空だ。
「じゃあ、行こうか」澄くんが言った。
「うん」星は返事をする。
「海さんを救いに」
「うん。海を救いに」
そう言って二人はお互いの顔を見てにっこりと笑う。
「僕も一緒に行ってもいいんだよね?」
ここまできて、もう一度確認をするように、澄くんは言う。
「もちろん」
笑顔で星は答える。
すると澄くんは、ぱあっと(今は見えない太陽のように)明るい顔で笑った。十代の少年らしい、素敵な笑顔だ。
二人は(どちらかともなく)手を繋いだ。
青猫が澄くんの肩の上にいるが、星はそれに構わず、(ちょっと怖かったけど)澄くんと手を繋いだ。(つなぐことができた)
二人は雪の上を、森の奥に向かって歩き出した。
……やがて、二人の姿は霧のような深い靄のかかる、冬の森の奥のほうに消えていった。二人のいなくなった世界のあとには、地面の上にある、二人の(並んだ)足跡だけが残った。
その足跡だけが、二人の孤独な少年と少女が、この世界に確かに存在していたことを、しっかりと記憶し、証明していた。
第八幕 終演




