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それはとても不思議な話だったけど、自身も魚という不思議な存在(しかも星のパートナーだ)を知っている星は、その青猫の奇妙な特技や習性の話を素直に信じることができた。少なくとも魚の存在や魔法よりは、青猫の奇妙な特技や習性のほうが現実的な話だった。
……あるいは、もしかしたら青猫は(魚と同じように)誰か人間が、魔女の魔法によって猫の姿に変えられているだけの仮の姿なのかもしれない、と星は(直感として)思った。
この森(つまり真夜中の森)は魔女が住んでいる深くて暗い魔法の森なのだ。……なら、そういうこともあるかもしれない。(魔女との契約でそういう役割を青猫が受け持っているとか、その契約、つまり仕事をこなせば元の姿に戻れるだとか……)
それから星は、その見知らぬ小さな女の子のことを、少しだけ思った。なんだか森に(きっと間違って)迷い込んだ海と境遇が、とてもよく似ていたからだ。
もちろん、その子の境遇が海に似ていなくて、(たとえば雪山で遭難するとか)見知らぬ女の子のままでも話は同じだけど、『その女の子が助かって本当によかった』と星は思った。
「そんなわけで、青猫には森に彷徨う人の気配がなぜだかわかるんだよ。もちろん、それなりに距離が近づかないとわからないんだけどさ。匂いとか、気配とか、猫特有の第六感とかさ、……どんな風にして青猫が森の中で人を判断しているのかまでは僕にはわからないけど、どういうわけか青猫にはそれがわかるんだ。だから最初に、星が海さんを探しているなら、青猫の能力が(あの小さな女の子のときみたいに)役に立つだろうと思って、青猫を探して連れてきたんだよ」と澄くんは言った。
なるほど。
星は澄くんの言葉に納得する。
「だから青猫が走って行った先に海がいると、あのとき澄くんは判断したのね」と星は言った。
「うん。そうだよ」と澄くんは答えた。




