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「……まだ、少し熱っぽいかな? もう少し、このままここで眠っていたほうがいいね」
「うん」
澄くんはそう言って星に(暗に)ベットで眠るように示唆する。
目を開いた星は澄くんの指示にしたがって、ベットに横になろうとするが、それを澄くんは、少しだけ待って、と言って止める。
なんだろう? と星は疑問に思う。
それから澄くんは、すぐに戻ってくる、と言って静かに部屋を出て行った。
星は澄くんが部屋からいなくなって少しだけ寂しかったが、その言葉通りに、澄くんはすぐに部屋の中に戻ってきた。その両手には真新しい白いシーツと新しい毛布(色はやっぱりらくだ色だ)を抱えている。
その荷物を見て、星は黙ってベットから腰をあげる。
それから澄くんはてきぱきと、とても慣れた手つきでベットのシーツを交換して、その上にきっちりと毛布を引いた。いらなくなった古いシーツと毛布は綺麗にたたんで、澄くんが両手で持ってそれをそのまま部屋の外へと持ち出していった。
その間、まるでお父さんの家でのお仕事の邪魔をしないようにして、じっとそばにいて、その様子を物珍しそうな目で見つめている小さな子供のように、星は部屋の床の上に立って、その澄くんの様子を(少し楽しそうに)観察していた。
それからすぐにまた澄くんは部屋の中に戻ってきた。(ようやくというか、今度の澄くんはなにも荷物を持っていなかった)
星はベットの中に入ることもなく、まだじっと床の上に立っていた。
「星。もうベットの上で横になっていいよ」と澄くんは言った。
「うん」と星は返事をした。
そして澄くんの言葉通りに、ベットの中で横になった。




