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「魚、海はどうなったの?」

 星の記憶は全身を真っ黒な闇の色に染めた海と、地面の上で二人でもみ合うようにして、格闘していたところで途切れていた。きっと私はあのあと、(ようやく山田海と言う存在をその手の中に掴み取っておきながら)力尽きて、その場で気を失ってしまったのだろう。

 ……情けない。(そんなことを星は思って、唇を強く噛んだ)

『まるで幽霊みたいに、消えちゃったよ。いや、逃げちゃったって、言ったほうがいいのかな? とにかく君が気を失ってからすぐに、僕たちの前から海はいなくなってしまったよ』と魚は言う。

 ……消えてしまった。……いなくなってしまった。

 そうか。海はまた、私の前からいなくなってしまったのか……。魚の言葉を聞いた星は、少しだけしゅんとする。

 でも、星はすぐに気持ちを切り替えて、心を強く高ぶらせるようにして、自分の魂を、青色の炎を、激しく燃焼させて命を動かすエネルギーに変えていく。

(そうしないと、私のポンコツなエンジンはすぐに錆び付いてしまう。そうしたら私は、きっともう、一歩も前に進めなくなってしまう)


 次第に、星の瞳にきらきらとした光が宿る。

 そんな星の様子を観察して、魚は少しだけ(星に隠れて)嬉しそうに笑った。

『だから、僕にまかせてって言ったのにさ、無茶するからだよ。おかげでせっかく頑張って隠れてたのに、僕の存在が魔女にばれたままになってしまったよ。これはあとあと、面倒なことになるよ』魚は言う。

「どうせいつかはばれることでしょ? いつまでも愚痴を言わないの」

 星は(姿の見えない)魚にそう言葉を返した。

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