第二話 ホノートの森の静けさ
ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ…
時計のアラームが鳴り響く。もう朝か………いや、まだ薄明り…
「…あ、4時にセットしてた。寝よ。」
間違えて4時にアラームをセットしていたらしく、まだあまり明るくないのはあたりまえだ。
俺はまた布団をかぶった。
「…いやいや、さすがにだめだろ。」
なんかここで二度寝したら負けな気がした。いや、なぜか二度寝してはいけない気がする。
そんなことは気にせず、とりあえず暇だったのでスマホを触る。と、LINEで千江からメッセージが今しがた届いた。
《起きてる…?》
そんな簡単な一言。なぜかは知らないが千江も4時くらいに起きたようだ。
《間違えて4時にアラームをセットしたみたいで、今起きてるよ》と返信すると、少しして返信が届いた。
《え?私も4時にセットしてた。奇遇だね(*^^*)で本題だけど、実はさっきバルコニーに出たら、空に変なものが浮かんでるのが見えたんだけど…見れる?》
まさか千江もアラームのセット間違えだったとは。偶然とは思うがなにか裏がある気がした。
しかし変なものが見えたっていうのは気にかかるので、一軒家のバルコニーに出て空を見上げた。
見える。何か黄色く発光しているように見える小さな丸い物体が雲の高さにある。俺はすぐさま写真を撮った。しかし、なぜがその物体は写らない。物体を観察しながら千江に《黄色い丸いものが今見えてる》と返したが、その途端すでにその物体はどこかへ消えていた。
俺はUFOだと思ったため、千江からの返信を待ちながらネットニュースやSNSを漁った。しかし、黄色い物体を目撃したという趣旨のものはなかった。
《見えた?でも消えたね…UFOだったのかな?でもサイトとか見てもみんな見てないみたいだし、写真には写らないし…》
こうなると人はやはり同じようなことを考えやすいものだ。写真を撮る、色んなサイトを見る等。
とりあえず《今日は様子を見よう》と返してこの話は一時中断した。
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『weather forecastの時間です。』
今日は土曜日、高校は休みだ。だからいつもより遅めに起きるのが楽しみだだったが…まあ仕方ない。
朝8時頃、リビングへ行くと母親が天気予報を見ていた。
『台風情報です。日本の南で発生した台風4号は徐々に日本へ北上、来週火曜日関東に直撃すると思われます。今後も予報は更新していきます。』
台風か。まぁこちらにこないならいいだろう。とはいえ台風で高校が休みになるのは喜ばしいことなんだが、仕方ない。
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「…ターニャ、大丈夫か?」
「い、いや、な、何でもない、大丈夫…!」
エスターニャ、森探索中に後方支援に回るの巻。俺たちの後ろのほうで木に半分身体を隠してこちらを見ている。
実は12年前、この森に来たエスターニャはトラウマとなる出来事に出会った。まあ、リスが飛び出てきただけなんだが。どうやらそのことをすっかり忘れたままこの森で調査しようとかなんとか言いだしたみたいだ。
(フッ…エスターニャ、そんなんじゃエディンと付き合うなんて100年先になるよ…)
(くぅ、ゲハイルめ…私が怖がってるからってニヤニヤこっちを見てエディンの隣にいて…むかつく…)
「ターニャ、行くぞー?」
「あ、い、今行くから!」
と、そんなことを二人がおもっていることなど思いもしないエディン。鈍感なのか、二人が隠すのがうまいのかは二人以外は知る由もない。
しばらく森の中を進んでいくと、生き物の声がどんどん後ろに遠ざかってきた。ここに生き物の気配を感じることができない。
「多分ここだよな…」
「さっきより静かだね…」
「ほんとに消えちゃったのかな…?」
完全なる静けさとまではいかないが、寂しいような雰囲気を感じる。俺たちはもうちょっと探索することにした。
このシリーズ、長くは続かないかもしれません。