表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/75

3-22 晩酌

 晩酌




「お疲れさま、ハヤトも飲みねい飲みねい」


「はいはい、ほどほどにな」



 ハルカは寝た。なーこも自分の寝床でぐっすりしている。


 今夜は久しぶりの二人きり。


 二人きりで夜のひと時を過ごしたいなと思った。


 私は今日くらい甘えさせて貰えないかなって。そう思った。



「アカネ、何かあったの?」


「ううん。別に」


「うそでしょ」


「違うよ」



 違うんだ。ただ単に一人占めしたいなって思っちゃった。それだけなんだ。



「こうやってさ、二人っきりになる事もなくなってさー。…ちょっとだけさ、さみしかったりしねぇ。なんて」



 うっわ、言っちゃった。恥ずかしい。こんな年になって、娘もいて。



「そっか、さみしいか。俺もかもしれない」




 そう言って、ハヤトは、グラスのビールを飲み干すと席をたって、私の右隣に変わった。手優しく重ねる。肩が触れ合う。息遣いが聞こえた。


 昔を思い出す。


 前のアパートは狭くてさ、何しようにもすぐに二人の距離が近かった。


 視界の端にちらつく彼の姿は、いつまでも変わらなく愛おしい。


 それが今は残念。


 私たちだけの世界がここにあるってのはわかる。ハルカのために必要なことも、社会人としても一端のステータスがいることも、わかっている。


 でもそうやって、離れた距離はもうそのままなのかなって思うこともあったんだよ。


 それを、こうやって一瞬で溶かしてくる。


 ハヤトはすごいや。心がふわあって優しく包まれるよ。


 

「そんなことは俺だって感じているよ。最近家族に優しくなれないなって、なんでか心がざわつく。なんてことなかった心配事が胸を突く。アカネに触れようにもきっかけがつかめない。なんだろう、付き合い始めた頃みたいに不器用になった感じがしたさ」


「うん、私も。そうなの」


「すこしだけだけどさ、今夜くらいは二人っきりの時間を過ごせないかな」


「うん、そうさせて、ね?」



 私は自分からハヤトの腕の中に潜っていく。


 誰にでも優しいハヤトの他の誰にも見せない優しい姿を、今だけは私一人のもの。


 そこからはいろんな話をした。


 これまでの不安が流れ出るかのように。


 しかし、それも二人でのぬくもりが溶かし消し去っていく。


 

「あとね、今度の話なんだけど」


「うん、何?」


「ハルカがさ、学芸会するんだって」


「保育園でか?」


「そうよ、きっと、可愛いわよ」


「そうか、俺も行こうかな」


「何言っているのよ、仕事でしょ」


「大丈夫、良い後輩がいるんだ実は」


「シズクさんのこと?」


「うん」


「無理するくらいないなら、こなくていいんだからね?」


「行くよ、行きたい」


「全くもう…」


「無理なんかじゃないさ、きっと大事な日になる。そう思ったから行くんだよ」



 甘い時間はもうすぐ終わり、また朝が来る。その前に現実が帰ってくる。


 でもそこにはそこで新しい形の愛がある。


 家族としての形も新しく作り上げたい。


 それでも今日みたいな日々がまた来るのを待っている。


 たぶんだけど。


 明日からはまた私たちは新しい仲良しの私たちになるだろう。


 そうだ、きっとそうだ。


 じゃあどうしたものか。


 目下の目標として、次の学芸会の観覧。ちょっと楽しみになるように祈っていよう。


 一番楽しく、楽しみたいのは、私たち。人生は楽しんだもの勝ち。


 やっばいなぁ、やっぱり飲み過ぎたかな。余計なこと言っている気がする。


 もう寝よう。また明日になったら、明日もきっとハヤトとハルカを好きになる。


 そういう家族でいられるように。




二人きりの話を書くのは久々。


物語は一気に進みます。進ませます。


戸惑ってられないんで。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ