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2-19それからというもの

 それからというもの



 それからというもの、俺は不真面目にも真面目に仕事に取り組んだ。


 不真面目だと思われるのは、俺がそう思いたいからであって、きっとただ考える時間がほしかっただけであろう。


 アカネが家を出た。もう一週間になるか。大丈夫。彼女は実家にいて、業務連絡は取れる。


 その間に俺は何をしているのか。ただ仕事をするばかりで、アカネを迎えに行こうと思わなかった。きっと待っているそう信じたいけど。信じられない。そして、シズクにも迷惑をかけない方法を探していた。


 探すというよりは、誰かが変化を起こしてくれるのを待っているだけか。


 こんなにも自己嫌悪しながら行動しないのは初めてだな。つくづく弱い人間だと思う。これもいいわけか。


 事務作業として、デスクのパソコンをたたいていた。まだ午前中、業務を開始して間もないため前日の残りから今日の仕事分と忙しい時間である。


 シズクもそばのデスクで書類の作成に追われている。


 朝食は珍しくコンビニで途中で買った菓子パンしている。アカネがいないと朝食を作ることも面倒に感じる。



「ハヤトくん。これをもって得意先を回ってくれ。いつも通り頼むよ」



 上司の言葉を一瞬聞き漏らしたが、なんてことない内容でよかった。荷物を整理して上司から書類と紙袋をもらい、入り口の車のキーを取る。



「シズク、行くぞ」



 そして、いつものようにシズクを連れていった。





 公私混同はしない。社会人として当たり前だ。


 しかし、仕事を通じて知り合い、仕事の場で会うような場合はどうにもそううまくいかない。この場合シズクのことである。


 まだまだ暑い。特に車の中というのは熱がこもりやすいため、エアコンをつけたくなる。


 会社の名前が書かれた白い軽自動車に乗り込み、いつも向かう得意先へ。助手席にはシズクがいる。


 アカネといざこざになってしまったことは彼女に伝えていない。伝えればまちがいなく自分のせいだと、喚き散らしてうるさいに決まっている。


 しかし、俺と彼女の問題はきちんと解決するべきと分かっている。



「シズク、昔のことは昔のことだ。俺にとってお前はシズクだ」


「それは、もう、昔とは違うってことですか?」


「そう」


「わかっています。先輩には奥さんがいて、もうハヤ兄ぃじゃない、ですもんね」


「……そうだ」


「私も大丈夫です。ちょっとわかって欲しかっただけですから。これからも同じようにしてもらえれば」



 その言葉に甘えさせて貰いたい。こんなのは問題から目を背けるようなものだが、それでも解決と俺は言いたい。


 得意先についたのは話が終わってすぐである。そこからは仕事モード。社を背負っているわけだから中途半端なことはできない。


 基本的に外面よくしている俺は社内外から高評価をもらっている。そんな期待を裏切らないためにも礼儀正しく強気で。後輩であるシズクにもその姿を見せる。それすらも仕事である。


 彼女に見せる姿のほとんどは、そういう姿だ。アカネに見せるそれとは違うのだ。それを、彼女に見せしめのように見せることが、言葉にしない汚い大人の俺の態度。そうすることで、暗に理解してもらいたい。


 帰り道の車内。きっとさっきの語り口でもう、俺の意図は理解しているよう。そう感じていた。



「いつか、さ。俺の奥さんに会ってくれないか。今回の件を俺が収めることができたら、あってみてもいいと思うんだよ。きっと、シズクとアカネは友だちになれると思うから」


「なんだかそれ、不倫してすみませんでしたーって謝る感じじゃないですか」


「いやまさか!もうそんな状況になっていないようにしておくから」


「ふふ、冗談ですよ」



 冗談を言う顔は以前のそれ。アカネには俺たちのこんな姿を見てほしいと思う。


 仕事をするときの、申し訳ない空気が漂う感じはなくなりそうだった。以前のようにもどれそう。しかし確実に以前と違うため、手探りで新しい関係性を見つけなければならない。それこそ以前冗談で言った上司と部下のような、ね。



「先輩とまた少し話せたことは、よかったですよね」


「どうあれ、そうだと思う」


「それはそうと、実は私、そろそろ車買おうかと……」


「まじか!!!!」





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