2-18相談中
相談中
花火大会の夜。自宅まで、戻った俺たちはしーちゃんについての話をすることになった。
「ハヤト、お茶でいい?」
「うん。じゃあ、座ってくれるか」
そして始まった。
「アカネは、しーちゃんについて母さんから聞いてたよな」
「昔近所だった幼馴染だってことは」
「俺もそのくらいの思い出しかない。アカネが聞きたいのは、五月の休みの日のことだろう。結論から言うと、その日家に入れたのはそのしーちゃんだ。俺の会社の後輩。シズクがしーちゃんだ」
「前から知ってたの」
「知らない。泊まった翌朝、シズクに連れられて昔住んでたところに行ったんだ。そこでわかった」
「……、てか、泊めたんだ」
「あ、ああ。泊めた。誓って何もない」
「何もって?」
「一緒に飲んで、終電ないからって泊めることになっただけ」
「それで?」
「……キスもセックスも何もしていないよ。何もだ」
「でもシズクさんはそのつもりだったんじゃない?」
「あいつは後輩だ。あいつがそうでも俺はない」
「しーちゃんって分かっても?」
「そうだ」
「というか、ハヤト。なんでそんな強気なの?反省してないの?」
「あ。……申し訳ありませんでした」
「ごめん、やな奴になってた」
「いや、アカネは悪くないから」
しばし沈黙。そういえば部屋が暗い。蛍光灯が調光かもしれない。が、確かめようという気にならない。
正座のままの沈黙。
「これが、あの夜あったこと?」
「うん」
「朝にさ、私帰ってきて、掃除したんだよ。知らない女の痕跡がさ、わかるんだよね。
匂いも違うし、私でもハヤトでもない髪の毛が落ちてるし。
何より、そこに一人きりというのが辛かった。ハヤトがいないことが一番いやだった」
「アカネ」
俺は、手を伸ばす。うつむいてきっと泣いているだろう彼女を機械的に。
それを彼女が避けて。俺は自覚する。
俺は何をやっているのだろうか。
「ハヤトは何も悪くないよ。だって、何もしてないから。私が弱いだけだから」
そう。俺は何もしていない。シズクに、アカネに。
「大丈夫だよ。もういい年だし、ハヤトのことも知ってる。信じられるし。だから」
一人にさせて、彼女がそう言うのを俺は、止められなかった。もういい年だ。子供じゃない。大の大人がそう言うのだから、そうさせた方がいい。そうでしょハヤト。
そう言われた気分だ。俺は後を追えない。何もけじめをつけていないこの身では、アカネを追いかけて抱きしめてはいけない。
そういえば、調光だった。電気は、消そう。
考えがまとまらない。
そんなのは初めからか。
初めからちゃんと考えていたら、アカネも俺も傷つかなかった、かもしれない。
花火大会だったな。もっと楽しい日にしたかったな。残念だ。
非常に、残念でならないよ。




