2-17花火大会
花火大会
八月だ。
夏のイベントと言えば、何ですか?
色々あると思うけど、いまいち私にとってはピンとくるものがない。ここしばらく、そういうものとはご無沙汰だからだろうね。
そんな風に思う始める夏の日、ハヤトは私を花火大会に行こうと誘ってきた。
とても楽しかった。うれしかった。
それが、私の夏のイベント。
「アカネ、バイトについて教えてもらっていいか?」
台所で朝食を作っていたハヤトの言葉にドキッとした。布団を押し入れに片付けるところで、驚いて落としそうだった。
今日は平日。これからハヤトは仕事で私は十時からバイト。うちの旦那様は会社に行く前に朝食を作ってくださるありがたーい旦那様なのだ。なんちゃって、たまにだけどね。うれしいよ。
目玉焼きの焼く音が聞こえて、私はなんでと答えた。カーテンは開けているので、白っぽい室内を強く照らす光の反射で、ハヤトの顔を見ようにも見えない。
ハヤトも私の顔は見えなかっただろう.ドキッとした理由は、そろそろバイト増やそうかなって思っていたところだ。鋭いのか?
「最近出かけてなかっただろ。一緒にどこか行きたいと思っててさ。今度港のほうで花火大会があるらしいんだ」
「ああ、あれね。あの日は確かバイトは入ってなかったよ」
「何食べたい?」
今度は私に笑いかけるハヤトの顔が見えた。私は考える。
「何かな、何でもいいや」
「そ、じゃ今から適当に作るな」
朝食のほうだったか。
二人で朝ご飯を食べ、ハヤトを送り出し、私もバイトへ行く。
花火大会の日になった。
夕方から、電車で向かうことになった。残念だけど、浴衣はない。実家に帰れば合ったんだけど私が拒否した。なんだかいらない気がした。まぁね!浴衣じゃない方が動きやすいもんね!
六時を過ぎてもまだ明るい方。この日が落ちたら花火の始まりだ。電車の中で揺られることはどことなく好き。ハヤトはどうだろう。
さてさて、花火大会ですが、これまで来たことはなかった。なぜなら規模が大きすぎて人がめちゃくちゃだからです。一万発といわれてもどれくらいかわからない。いやぁ、ここいらの町内会とかお金の使い方が頭おかしいからね。前も言ったけど、色々とねじ吹っ飛んでるよね?そう言えば、私がピアスを無くしたあの大安売りのイベントにはあれからも参加してたよ。ハヤトと一緒だけどね。うんうん。もちろんピアスは毎日つけてます。
そろそろ花火大会の会場につきますかね。港一体だから、人並みに沿えばわかるかな。まずはハヤトを起こさなければ。
「ハヤト、そろそろつくよ。起きて」
「……、お、おぉう。うん。あー」
……、赤ちゃんですか。
なんやかんやでとーちゃく!人ぱねぇ!
花火が始まる時間まで少しあったから、出店によっていか焼きと焼きそばを買う。なぜそのチョイスなのかって?出店の中では一番腹持ちとコスパがいいのですよ。主婦の感覚ですよ。ふふふ。
「しっかし人多いな。座ってみるのは無理だな」
「だね、立ち見なのは覚悟していたから、浴衣はやめたんだ」
「おお!アカネ頭良いな」
「もっと褒めよ!」
焼きそばもってじゃれついたから危うく服にしみ作るところだった。危ない危ない。
そして花火が始まる。しゃべっても、おー、とかすげー、とか。そんな感じ。きれいだった。
正直に言います。告白します。
ハヤトを信じられなくなってきていました。五月、家で他の女の痕跡を見つけてから。聞かないし言わない。私が弱いからそうしない。
花火の最中、ハヤトは私の手をずっと握ってくれた。ハヤトは以前から変わっていない。何にも。私がちょっとおかしくなっていた。そうわかった。
花火が終わり、満員の電車の中、帰り道で私は尋ねた。五月の休みのこと、教えてくださいって。
「わかった。今夜家に帰ってからゆっくり話そう」
密着した電車の中、汗をかいたのかハヤトの体温は感じられなかった。それでもずっとハヤトの手は離さない。ぎりぎり見える電車の窓から、夜はまだまだ長いことを確認した。
五月から八月まで我慢したんですよ。
アカネさんすげーよ。




