2-10のみのみ
のみのみ~
「あー。やっぱり人のお金で飲むお酒は美味しいですね。先輩」
「まだ成人してから間もないくせに、知った口をききますねー」
「どれもこれも、先輩のおかげですよー」
「確かにそうだ」
俺の金使いすぎだよー。すっかり俺の金で酒豪に成長しているよー。
いつもの居酒屋で、いつものように俺がシズクにお酒をおごる。彼女はきれいな顔に似合わず酒豪っぷりを披露している。俺と乾杯した中ジョッキのビールはすでに空になりつつあった。
座敷のようなこの居酒屋は個人の空気を大切にしており、ほとんどが仕切りを持つ個室形式の席だ。そのため小さめになったテーブルにはすでにいっぱいのつまみがそろっている。つまみといいつつ、ボリュームがあるので夕飯のようなものだが。
今日飲んでいることはアカネに知らせていない。
今頃アカネは両親とともに温泉だ。わざわざ連絡することもないだろう。部屋に帰っても俺だけだ。……なーこはいるけどね。そういうことでシズクを誘った意味もある。なんだかんだ言っても後輩にはいい格好つけたいものだ。
しかし、さてはて。
「なぁ、頼みすぎじゃないか?こんなに食えるのかよ」
「先輩ともあろう人がそんな弱音を吐くなんて、お疲れですか?いまどきの草食系男子でもあるまいし。そういえば、あんなに私がお膳立てしても手を出そうとしない方でしたねー。ヘタレちゃんですもんねー」
彼女は胸元をはだけさせて、向かいの俺に近づくように前のめりになる。まぁ、俺もいい大人なのでこんな色仕掛け。目をそらすまでもない!
……、こいつはこいつでいい体しているんだよな。アカネのほうがナイスボディーだけどな。
「先輩……。ガン見はちょっと」
「あ?わざわざ目を凝らさないと、わからないくらいのお子様ボディーだろうが」
「うわぁ。ひどいですね」
俺の言葉で彼女は居直す。
あれ?今の俺の言動ってセクハラじゃないか?あー、俺もおっさんになったもんだ。まぁ、こいつ相手ならいいか。
しばらく黙っていたものの、行動はお酒へと移る。
酔っぱらうと、箸も進む。心配事もすべて解決。次を頼む始末だった。
「せんはーい。もうね、子供扱いは、してはいかんのですよ~。わかりますかぁ~?」
「はいはい」
確かに子供じゃない。子供ならこんな量のお酒は飲めないわ。まったく。まじでカードだなこれは。
こんな奴だとは思わなかったんだけどな。もっと、棘のある。鋭い女の子だと思っていた。強がってばかりだから、周りに敵が増えそうなのは見てわかる。優秀なところも拍車をかけるか。
ちゃんと見張っていなきゃダメなやつだということだな。
俺は梅酒ロックでしみじみ飲むのが好きだ。後半はそればっかり。
おかげで、自分の世界に入ったためか、彼女のことを見張り忘れていた。トイレから戻ると、見事にこと切れたように眠る姿があった。
今は、夜の十一時を回るところ。
「あ!!シズク!終電は!?お前電車だろ。せめて家どこか言ってから寝てくれ!おい!」
「う、ううん……。はぁ」
あー。これは。いけないやつじゃないかな。
……。
「俺今何考えた!!」
いや、しかし、他に仕様がないのは確かであるし。俺はこいつをどう思っているのか。まったく関係ないな。ただの後輩だ。俺が成長を見守るべき子。
「いくつか考えてしまったが、何だ。何もおかしいことはない。面倒で面倒でしかたがないこのバカ後輩を俺が面倒を見てやらないといけないのか」
「そーですよぉ。先輩。面倒見てくださいねー」
「てめぇ、起きてたのか」
テーブルに突っ伏していながら答えた。
「先輩。実はもう終電ないんです。できればでいいんですが、始発まで先輩の家に泊めてもらえませんか?もちろん何もしませんよ?先輩が何かしたいなら別にいいですけどねー」
ふひひ、と。人を馬鹿にする声がする。
「馬鹿が。既婚者なめんな。新婚なめんな。始発まで家に入れてやる。その間、説教な」
アカネがいた方がよかった。そんな思いが存在しながら、確実に、いなくてよかったと思った部分もあった。
俺はシズクの頭を平手でたたき、店員に会計をお願いした。
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