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2-7知っていることと知らないこと

唐突なシリアス

 知っていることと知らないこと



 私は知っている。彼がとてもいい人だということ。


 私は知らない。彼の愛する人を。


 私は知りたくない。私の彼に対する気持ちを。


 私はちょっと事情があって、大学を辞めた。ま、それでも優秀な私はほどほどの就職先をすぐに見つけた。面倒な研修も終わってこの春から支店に配属されることになる。


 そこであった彼は、左手にきれいな指輪をして、文句を言いながら幸せそうな顔をしていた。私はそんな彼を先輩と呼び、私のことをシズクと名乗った。


 私の心がちくっとなる悪あがきだったのかもね。


 私は今もちゃんと仕事をしています。研修は面倒だといいましたが、それはそれ。これはこれ。やることはちゃんとやります。今からはデスクワークがほとんどになるから、机に残り一日縛られることになるのかな。


 先輩は、お昼からいなくなった。


 私にはちゃんと理由を教えてくれる。奥さんの実家に今から向かうそうだ。アカネさんというらしい。話をよく聞かせてくれた。名前だけとか、聞いた話だけとかなら結構知っていることになるのかな。


 私の向かい側にある先輩のデスクは空いている。


 先輩一人いないだけで仕事が面白くなくなるのは、いいことなのかな?面白くないからさっさと終わらせようという気になる。


 私以外の職員はずっと年上であんまり話をしない。先輩と話す時みたいにはできなかった。まぁ、世代が違いますからね。先輩とは、年も少し離れているけど、それ以上に話しやすいからね。冗談を言い合う仲ってやつですか。


 先輩のことは好きですよ。あれですよ。人として好きっていうやつです。だからまぁ、いい人だなって思いますよ。そりゃ当然。


 今日はいい天気だ。こんな日にデスクワークとはついていない。


 先輩が勝手に休むからです。まだ私一人じゃ取引先回りはさせてもらえないですから。先輩がいないと仕事ができないんですよね。



「使えないやつですよ。全くです」



 私の独り言が部署に響いた。焦った。ちょうど上司も他の人も出払っていてよかった。流石に私も年下に使えない呼ばわりはキツイってわかりますよ。……言ってしまったけど。


 というか、先輩奥さんに優しすぎじゃないですか?何ですか奥さんの実家に行くから半休とりますって。大体先輩はなにか都合が悪いときって奥さんのことなんですよね。あれですか?恐妻家ってやつですか。あーでもわかるかも。いい人は尻にひかれるって言いますもんね。私ならそんなことないですけどねぇ。


 おーけい!仕事終わり。さっすが私。優秀だわー。勢い余って今日先輩がやる分も全部片付けてしまいましたわー。自分でこの優秀さが怖いですー。妬みとか怖いですー。……ここにそんな人いないんだけどね。でも、これだけやったんだから今度先輩におごってもらってもいいよね。メール送っときますかな。



『先輩殴られました?もう顔パンパンですか(笑)写真送ってくださいよ自画撮りで(∩´∀`)∩(笑)先輩がサボった分私が全部お仕事終わらせちゃいましたー。すごくないっすか!?これはもうおごってもらうしかないですよな( *´艸`)じゃ、楽しみにしてまーす』



 送信っと。



   ブーブー



 返信早いじゃないですか。なかなかポイント高いですよ。



『じゃ、牛丼な』



「牛丼って……。学生じゃあるまいし」



 なんかもう、先輩らしいですわー。ここでワインバーとか誘われたらもう引きますもん。にしても安上がりにしますね。


 まぁ、先輩とならどこでもいいですけどね。


 今日も定時に上がれそう。今日も先輩の尻拭いで疲れました。年下にこんなことさせるってどうなんですかねー全く。ダメな先輩ですよ。


 私は知っている。私の心を。


 私は知らないつもりでいる。私が嘘をついていることを。


 私は知りたくない。これから先、私がどうなっていくのかを。


次回更新は19:00です。

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