1-2ペン回し
皆さんはいつの頃にペン回しを覚えましたか?
私はシャーペンを持ち出した中学生の頃です。たくさん練習しました。当時はペン回し専用のペンが発売されてましたね。懐かしい。
ペン回し
五月の一週目にある休みの日。
「…」
「…」
さっきから私たちは部屋で、勉強をしていた。アレだ。ユーキャンというやつだ。二人とも資格とか持ってないから、何かやってみようということで始めてみた。
でも、もう全然集中できない…。
だってハヤト、ものすごいペン回ししてるんだもん。
あんまり知らないんだけどベーシックってやつ?あれって一回回してキャッチするものじゃないの?親指を二回転してんだけど!?
こうして黙々と勉強するのも久しぶり。顔を上げるとすぐ目の前にハヤトの顔がある。まぁ、イケメンなんじゃない?合格点でしょ。
カッカッカ、シュルル、パシ。
何なの!?めっちゃ回ってんだけど。今度は人差し指から小指まで動き回ってんだけど、どうなってるわけ。
「ねぇ、…」
「ん?どうした?」
「…いや、なんでもない」
シュルルル、パッパパッ、スルスルピン、パシッ。
「もう、なんなの!?」
「ええぇぇ!?どうした?」
「ペン回し!すっごい気になんだけど」
ふつう、あまり人の癖について何か言うことはないのだけど、さすがに叫んでしまった。
それを聞いて、怪訝顔を見せながら彼は黙る。カチッカチッと時計の音だけ聞こえた。
シュルル
「回すな!」
「そんな理不尽な…」
「わかった。確かに一方的にやめろというのは理不尽ね。じゃあペン回しについて話しましょ」
「なぜそんな上から目線で…」
シュルル
「ペンをおけえぇぇ‼‼」
ユーキャンから届いた教材の上に二人ペンを置いて、正座する。狭い部屋なのでテーブルを囲んで勉強していた。お気に入りのクッションは腕の中にある。
「では、議論を始めます。議題はペン回しについて」
「いや、ねぇなんでそんなに…」
「私語は慎みなさい!」
今は私が話しをしている。お黙り。
「…」
「ではまず、ペン回しとはどういうものか、説明を求めます」
「え、えーと。こうやって指に挟んで…」
「ペンをおけえぇぇ!」
「理不尽極まりねぇな!?」
「勝手な行動は困ります。言葉で説明してください」
「…ペンを指で回すことです」
「よろしい。では本題です。なぜ回すのですか?」
「…、…こう、癖のような…」
「じゃあ、やめてください」
「単刀直入だな。でもやめたくても、手持無沙汰というか、指が寂しいというか、ただもってるのは物足りないんだよね」
「じゃあ、やめてください」
「聞いてた!?」
癖って何よ。ただの癖で私はどれだけ集中力がそがれていると思っているの。おかげで教材が一ページも進んでいないわ。決してわからないわけでも、やる気がないわけでもないわよ。
「わかったわ。じゃあこうしましょう。ハヤトはペン回しをやめる。私は勉強をやめる。どう?」
「どうじゃねぇーよ!!どんな取引だ」
「のんでくれないの?」
「…ペン回しやめるよ。でも一緒に勉強はしような?」
彼は私がどんなに無茶を言っても決して放り出したりしない。今みたいにちゃんと見てくれる。ちょっと気持ちが温かくなった気がした。
というか、私の意見がそのまま通って満足だ。
ということでもう一度勉強を始める。
シュ…
「ペンをおけえぇぇ‼‼‼‼」