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《登場人物》


徳永 真実 (35)  警視庁刑事部捜査第一課警部

高山 朋美 (30)     同 巡査部長

加藤 啓太 (35)  警視庁刑事部鑑識課係長



沢渡 幸次郎(34)  ライトノベル作家

沖田 稔  (34)  フリーライター

殿倉 純一 (46)  オンラインゲームプロデューサー







「ゲームのログイン記録と登録者記録ですか?」


 そう言って首を軽く傾げながら困惑しているのは、WORLDWESTの運営をしているプロデューサーの殿倉。


「ええ」


 微笑みながら徳永は殿倉に頷いた。


「お見せする事はできますけど……」


 殿倉の口籠った事に、高山も同様な反応をする。


「けど……」


「時間がかかりますよ。登録者は何万人。いや何十万人といますから」


「構いません。この人が登録していないかさえあれば結構ですので」


 徳永はそう言って、白い封筒をスーツのうち胸ポケットから取り出して封を開け、折りたたんでいた白い用紙を取り出し、殿倉に見せる。

 その姿を見て、自分にも非現実的だった光景を見つめるとは思いもよらなかった。

 渡された一枚の紙には被害者の名前と経歴が載っている。


「この人の登録情報ですか?」


 高山は殿倉に説明した。


「そうです。この方がちょっと事件に巻き込まれた可能性がありまして、その時にこちらのゲームをされていたんです」


 続いて徳永が彼女の話についてさらに情報を加えていく。


「被害者が事件当日にプレーしていたかを確認したくて」


 殿倉は徳永に渡された紙とにらめっこしながら、二人に告げる。


「うーん。ちょっとログインの管理担当に訊いてみます。ゲーム登録で偽名を使っていなければいいんですが……ちょっと待っててもらえますか?」


 徳永は即答した。


「ええ。お構いなく」


 殿倉は急いで渡された紙を持って応対用の会議室から出て行き、運営室へと向かった。広い応対用の会議室に2人の刑事だけが残る。徳永はソファから立ち、部屋に飾られている映像モニターを見つめる。

 映像モニターから人気女性声優のナレーションと共に美しい映像とキャラクターたちが繰り広げる世界演出を見つめる。


《美しい世界の西で繰り広げられるオンラインファンタジーアクションゲーム。WORLDWEST!! かつてない未体験をあなたに!》



「ふむ……」


 映像にはオンラインゲームの軽いルールとチュートリアルプレーが流れている。


《WORLDWESTでは、色々な職業と何百種類にも及ぶ武器を選んで装備し、任務をこなしていくゲームです。ソロプレイは勿論。フレンドとのマルチプレイにオンライン対応だからいつでも通信・通話が可能! 》



「ゲームの紹介映像ですね」


「被害者はこれをやっていたのか……」


 映像を見て徳永は心の中に興味が不思議と思い始めていた。

 ナレーションはゲームの説明を続けている。



《プレー中では音響設定、画面設定は勿論、カメラ映像、背景設定もあなた好みのままに。好みの設定で自分のキャラクターを撮り、スクリーンショットに使っちゃおう!》



「なるほどねぇ……」


 そうしている間にドアをノックする音が3回、室内で響く。

 木製のおしゃれなドアが開いて、殿倉がファイルを持ちながら入ってきた。


「お待たせしました」


「早かったですね」


「偽名ではなく本名でちゃんと登録されていましたから早い段階で見つける事が出来ました。こちらになります」

 そう言って殿倉は会議用の机に、手に持っていたファイルを置いて、ページを開く。

 徳永はゲームの初回映像を見るのをやめ、彼らに近づいた。再びソファに座って、開いているページを目に通していく。



 《沖田 学 登録年月日     2014年5月17日 

      

      登録ID shinsengumi33


      登録キャラクター名 ソウジ・オーシャン


      最終ログイン日   1月15日21時13分》



 徳永はリストを見るのをやめ、再び席を立ち、ビルの窓へと近づいて外の風景を見つめていた。

 その間に高山が殿倉に訊く。


「こちら記録として写真を撮らせていただくことは可能ですか?」


「あ、でしたらコピーしたものをお渡ししますよ」


「ありがとうございます」


 殿倉はもう一枚あらかじめコピーしていた用紙を彼女に渡した。渡されたリストのコピーを高山は見つめる。


「事件当日にログイン、やはりしていましたね」


「うん。面白くなってきたね」


 徳永の表情は生き生きとしていた。


第6話です。話は続きます。

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