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9/9

8話

遅くなりました

すいません


スタート郊外「森林」


日照りが木々を照らし木漏れ日がキラキラと煌く


その光により出来た影から顔を覗かせ周囲を探る人物がいる



「……よし、俺がいくから、お前らは待機……特にシルフィ」


「……なぜだ!」


「戦うよりこうした方が効率がいいからだ……お前は俺が失敗した時の保険だ。そんときは思いっきり頼む」


「……」


「返事しろよ……!……シズクは精霊召喚の準備を頼む。フレイはバックアップだ……やらかすなよ?」


「はい」


「やらかしたりしないわよ!……あんたの頭を燃やしてやるわ」


「冗談でもやめてくれ……よし……いくぞ……!」


隠蔽を自身にかけ気配を消す


ゆっくりと気配を悟られないようにソレに近づく


落ち葉による足音を最大限立てないようにゆっくり……ゆっくりと……


冷や汗が流れる


これは気がつかれると恐らく俺は殺される


慎重にならなくてはならない


既に敵の警戒区域に足を踏み入れてしまっている


ドキドキと心臓の音が聞こえる


唾が口に溜まる


だがそれを飲み込むことすら出来ないほど目の前の黒い巨体にプレッシャーを感じる


人間の3倍はあるであろうその巨体から目をそらし手を伸ばす


……ついに目的のソレに手を触れた瞬間に異変は起きた


「キーーーーー!」


「失敗だカズヤ!離れろ!」


影で隠れていたシルフィが此方に猛スピードで走ってくる


「くっ!」


瞬時に光跳躍により後ろに飛ぶ


先ほどまで自分がいた地点に鋭い爪が凪がれる


その凪いだ風圧が離れた俺にまで伝わってくる


……あんなの食らってたら確実にお陀仏だ……!


だが自身の生存が紙一重だった事に戦慄する暇もない


光跳躍で距離をとりつつ第2の作戦を実行する


「盗難!」


盗難を発動させると俺の右手が仄かに光を浴び、そして対象のブツが光りだす


右手にずっしりとした重みを感じる


ブラックイーグルの卵だ


ヤツの卵を回収する。それが今回のクエストだ


どう見ても強そうなこいつと戦いたくなかったから盗賊の俺がこっそりと持ち出そうとしたのだが……


だったら最初から盗難で盗め?


そうしたかったさ


でも盗難はどうやらヘイトを集めるみたいで


「キィィ!」


「くっ!こいつ大人しくしてろ!カズヤ!そっちに行くぞ!気をつけろ!」


「フレイ!」


「うわっ!ちょっとあんた!危ないじゃない!」


即座に卵をフレイに向かって投げ、短剣を構える


「二重攻撃!」


二重攻撃でブラックイーグルの爪を弾く


……が、ギリギリだ


パッシブスキルの技巧で身体能力が上がってなかったら絶対に力に押し負けていた


ブラックイーグルのターゲットは完全に俺になっていた


これが盗難の弱点というか欠点というか……


盗難を使用すると周囲のヘイトを集めてしまう


隠蔽で隠れようにもタゲってる状態では効果を発揮しない


一度相手の視線から外れないと使用できない


鷹の爪が次々と迫ってくる


それを紙一重で躱す


レベルアップで習得した新たなスキル危険察知の効果のお陰だ


このスキルは自身に致命傷となる攻撃にだけ予測線のようなものが一瞬見える


その一瞬を逃さないように必死に避け続けている


つまりこいつの攻撃は全部致命傷ってことだ


因みにこのスキル致命傷とならない攻撃は予測線が出てこない



……まじやばい


レベル差がありすぎる


そもそも飛んでるってズルいぞ!


こっちの攻撃が届きやしねぇ!


ガサリと足場にあった落ち葉の塊を踏みつけ足を一瞬取られる


瞬間、予測線がハッキリと映った


「光跳躍!」


崩れた姿勢で光跳躍を瞬時に発動させる


……頭から後ろに飛ぶ形になったがなんとか避けることはできた


勿論受身なんて取れないし背中をガリガリと地面に擦った



「ちょ!カズヤあんたダッサイ!ぷぷぷぷぷぷ」


「いいから魔法!」


「わかってるわよ!フレイム!」


放ったフレイムを嫌いブラックイーグルは上にあがる


「精霊さん……力を……貸して……!氷よ……!」


精霊召喚を済ませたのだろう


シズクが杖を振るうとイーグルの上に魔法陣が浮かびそこから氷の塊が降り注ぐ


「……って!俺もやばいって!」


位置的に真下にいた俺は即座に身体を起こして離脱


無数の氷の直撃を受けて流石にブラックイーグルも動きが鈍っている


「はああああああああああ!一閃!」


何時の間に登っていたのか


シルフィが雄叫びをあげながら木の上から飛び上がりイーグルに斬りかかる


……が、少し浅い!


致命傷になっていない


「やばい!」


即座に俺はポーチからクナイを取り出し投擲スキルを発動し奴の目をめがけて投げつけた


それはイーグルが爪でシルフィを襲おうとしたギリギリに間に合い、目を潰す


鷹の甲高い鳴き声を聞きながら俺は足に力を込めて飛ぶ


「光跳躍!光跳躍!」


2回の跳躍により完全に奴より高い位置に飛ぶ


そして身体を反転させさらにもう一度光跳躍を発動させる


「くらえ……!背面攻撃!」


完全に背を向けていたイーグルを光跳躍によって加速し状態で刺し地面に叩きつける


ズンっとした衝撃で俺の身体は地面に転がる


……慌ててブラックイーグルを見るが……完全に動かなくなっていた



「……はぁ……ボロボロだ……」


「すまない。前衛として恥じる」


「……いや、元々失敗したのは俺だから仕方ないさ」


此方に駆け寄りながらそんな事を言ってくるシルフィに対して答える


「……それに、生き延びれたしな」


「……ああ。さらにレベルが上がりそうだな」


「だな……今回とかレベル上がってなかったらヤバかったし。レベル様様だ」


「ヒールかけるからそこ座りなさい」


「お前……唯一攻撃当たってないからな」


「うっさいわね!回復用のMP残しておかないとダメでしょ!全力のフレイムしていいならもっと凄いの出せるのよ」


「全力って……MP足りないんじゃないのか」


「うぐっ!」


「ごめんなさい……もっと……早く……召喚できてたら……」


「いや、シズクは気にしなくていいさ。まだ習得したばっかのスキルだし、それにあれのお陰でダメージが通ったみたいなもんだ」


「ちょっとカズヤさん?私のことも少しは褒めないと拗ねるわよ?治療してあげないわよ?」


「……せめて攻撃をあててくれ……いってぇえ!?抓るなよ……」


「しょうがないじゃない!でも私がいなかったらあんた爪でやられてたわよ!」


「それに関しては助かったよ」


「……しょ、しょうがないわね」


ちょろい


この神様これでちゃんと神の仕事やっていけてたんだろうか……


……深く考えないでおこう


回復が終わったのだろう、フレイの魔法の光が消える


「……うっし、ギルドに戻るか!今日はいい飯食えるぞ!」


「やったー!ご飯ご飯ー!」


「私はもう少し食い足りないのだが……」


「頼むから……もう俺MPないぞ……」


帰宅を渋るシルフィを説得しながら街に戻っていく



-----


ギルド「イリーナ」




「とりあえず今日も無事生き残れたことを祝してかんぱーい」


「かんぱーい!」


「お、レベルが上がった」


「あんたって本当すぐレベルあがるわね……でも見てなさい、私だって……」


「確かにカズヤは成長が早いようだな。このままでは追いつかれてしまいそうだ」


「凄い……です」


シルフィ達とパーティを組んでから約1ヶ月


何とか形になりつつあると思う


最低限の稼ぎはあるし、レベルも大分あがったしスキルも増えた


俺は今回のブラックイーグル討伐で冒険者レベルが5になってる。ジョブレベルは8だ


シズクはレベル3のジョブレベル5


憑依召喚以外に精霊召喚を習得してアタッカーとしても優秀になってきている


一番高いのはシルフィでレベル7のジョブレベル12


相変わらず攻撃スキルばかり獲得している……少しぐらいはパッシブとか防御系に振ってもいいんじゃないだろうか……



そして……


「どうして私だけレベルが上がらないのよ!!」


ドンっと机を殴るフレイはレベル2のジョブレベル8


こいつはジョブレベルだけが異常に早く上がる癖に肝心なMPを増やす冒険者レベルが上がらない


遅すぎるぐらい上がらない


確かにヒールをするためにMPを温存しようとしてたりして敵を倒せない事も多いのだが……


「レベルの上昇には……個人差がありますから……」


「つまり私には才能がないと!?」


おずおずと慰めるシズクに食いつくフレイは……余りにも哀れだった


「そう悲観することもない。レベルの上昇には個人差がある。早熟タイプもいれば晩成タイプだってある」


「そう?本当に?私大丈夫?」


「ああ。私だってどちからと言えば晩成タイプだから安心しろ」


涙目でシルフィに訴えかけてくるフレイにドンっと胸を叩き言い切る


……シルフィがちょっとかっこよすぎるので茶々を入れることにした


「でもシルフィ、この一ヶ月でレベル上がってるよな」


「……うわぁあああそうだったあああシルフィは上がってるうう」


「お、お前は!折角慰めたというのに!」


「慰めた!?やっぱり慰められてたの私!?」


チョンチョンと突かれる


「どうした?シズク」


「あんまり意地悪……しちゃメっ……だよ?」



かわいい


超可愛い



「大丈夫。これはちょっとした遊びさ。コミュニケーションってやつだよ」



ほら。よく小学校とかであるだろう?


一部の人間がハブかれてそれを誰かが咎めたら全員こう口を揃えて言うだろ?


遊びだって


ふざけんなよちくしょう


……って何で俺がフレイにそんなプレイをしてしまってるんだ


やっぱそういうの良くないよね!


「カズヤばっかりレベルあがって不公平だああ」


「そう言われてもな……じゃあ明日はお前のレベル上げに協力するからさ……」


「……本当?」


「ああ……明日だ。明日は遺跡に行って、スライム狩りをしよう。盗難でゼリー奪ってタゲ取りまるから、あいつらが固まった所に思いっきり魔法打てばいいからさ」


「……うん」


今日の稼ぎはかなり大きかったし、暫くは安泰なのだ


ここらでパーティのレベル上げに費やしても大丈夫だろう


そう、思っていたのだ




だけど俺のこの判断は、後に大きな失敗を生み出してしまったのだ



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