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5話


冒険者ギルド「イリーナ」


今日も多くの冒険者がそこでてんやわんやと騒ぎ立てている


そしてその一角の席にも3人の人物が今日の成果を報告し合っていた



「えー……本日は……スライムウルフから取れたゼリーが1個、ジャイアントスライムから取れたのが3個。計4個で12Gの稼ぎだった訳だ」


「……はい。カズヤさん……ほんとありがとうございます」


「お手数……おかけ……しました」


全身をドロドロにしている神と頭をドロドロにしている召喚士が死にかけた声をあげる



「普通に3人で割ると4Gの稼ぎになるんだが……シズク」


「は……はい?」


「その……宿賃とか持ち合わせって……あるか?」


そう。これは大事なのだ


例えば冒険者用の最低限の宿は5G取られる


シズクが何処に泊まっているのかはわからないが、今シズクに持ち合わせが一切なければ宿に泊まれないのだ


俺とフレイはまぁ最悪野宿……もしくはありとあらゆるものを我慢して一部屋を借りれば何とか宿代はある


俺たちの所持金は二人合わせても4Gしかないが、仮に報酬のうち6Gをシズクに渡したとしても合計で10G


宿代を抜けば5G


……晩飯と朝飯をパンの耳で我慢すればギリギリ生きていける所持金にはなる


というか、この世界の物価は高いのだ


例えばギルドの飲み物である酒は5G取られるし


飯だって高いのだと20Gや30G余裕で取られる


装備なんて一番安い防具が50G短剣ですら100Gは取られる


俺たちの稼ぎが少なすぎるのか、この世界の基準がおかしいのか


どっちも有り得そうだがワイワイと楽しそうに飲んで食ってしている他の冒険者を見る限りきっと前者なんだろう


このままだとまずい


飢えでどうにかなってしまいそうだ


……じゃない!


とにかく最低でもシズクに宿代ぐらいは提供しておかないと俺のメンツが立たない


ニートがメンツとか気にしてんじゃねえよと思うけどさ!


「カズヤ……あんた」


フレイが俺の考えを察してくれたのか情熱的な目で俺を見……あれ?


何か、凄くジト目なんですけど……


「幾ら私たちが貧乏だからって報酬の独り占めをしようだなんて最低よ」


「違う!そんな意味で金があるかって聞いたわけじゃない!」


「じゃあまさかシズクから巻き上げようっていうの!?」


「そんな訳あるか!お前ちょっと水飲んで黙ってろ」


「ご飯が食べたいいいい!」


「後でパンの耳買いに行こうな……」


「ひもじいよう……カズヤぁ」


「……あ……それじゃあ……ご飯……頼みますか?」


「え?ご飯!?」


「あー……俺たちにはその、持ち合わせがな」


「大丈夫……です。私が払いますから……今日助けてもらったお礼……です」


「しかしだな……」


こんな小さな子にご飯を奢って貰うのは穀潰しの俺ですら躊躇うんだが……


「私のお家……貴族で……お金……沢山あるから……今回の報酬も……2人でわけて?」


「シズクさん!俺達のパーティに是非入ってください!」


何この天使!


シズクちゃんマジ天使


もういっそフレイと神の座を変わってあげて!


「最低!今カズヤが凄く最低な発言した!」



うるさい!こんな素敵な出会いに俺は神に感謝をせねばならないのだ!


ワアワアと叫ぶフレイもご飯が運ばれてくる頃にはおとなしくなり


いや、むしろ率先して飯を平らげていた


この世界での初めてのまともな食事は文字通り涙が出るほど美味かった!



-----


「冒険者レベルとジョブレベルって何が違うんだ?」


スライムとの戦闘の次の日ギルドでシズクと合流して朝飯を食べながら俺は聞いた


「冒険者レベルは……ステータスが上がって……ジョブレベルはスキルポイントが上がります……」


「そういう事か……転職するとジョブレベルが1になるんだよな?」


「うん……あ!はい……冒険者レベルはそのままですけど……ジョブレベルは新しい職になると1に戻ります」


「そっか……あ、後さ」


「はい?」


「喋り方。無理して敬語使わなくていいからな?同じパーティメンバーになったんだしさ」


「あ……その……言葉使いは……」


「あー、ごめん。そのうちでいいからさ」


シズクは貴族育ちだと言っていたし、きっと親にそうしろって言われたんだろう


年は聞いてないけどきっと俺よりは小さい


もしかしたら小学生かよくて中学生ぐらいだろう


そんな彼女に敬語を使われるのはちょっと……と思ったんだけど、軽率すぎたか


「……はい」


……まぁそんな小さな子にここの朝飯も払ってもらうことになってる俺たちってほんとクズだけどなぁ……


「もーカズヤったら、シズクちゃん困らせないの」


「ぜ、全然……困ってませんから」


「ほんと悪い……だが朝からガツガツと食べるお前にだけは言われたくない」


「仕方ないじゃない!食べなきゃやってられないわよ」


フレイはヤケクソ気味だ


その理由は……


「スキル覚えてて魔力カンストしてるのにMPがなくて使えないなんて詐欺よ詐欺……これが飲まずにはいられますかっての!」


ゴクゴクと水を飲みながらそんな事言われてもなぁ……


先日ファイアーストームが撃てなかったのはとどのつまりMP不足だったらしい


この世界での魔力ってのは魔法での攻撃力や魔法の扱いの巧さの事らしく、MPは所謂裏ステータスになってるらしい


フレイのMPがどれほどあるかは分からないが、少なくともファイアーストーム1発すら撃てないMPだということだ


強化魔法が使えているから他のステータスみたいに1って事じゃなさそうなのが救いと言えば救いだった


MPだって冒険者レベルが上がれば増えるはずだし


「今日はお前のMP量測ったり俺のスキル振りだったりで狩りにはいけないぞ……」


「わかってるわよ……」


「……と言っても盗賊のスキル振りかぁ……ネットあればすぐに最適なやり方がわかるんだがな」


現在俺の冒険者レベルは2、そしてジョブレベルが3と表示されている


スキル項目の所にはジョブレベル1の時には表示されていなかったスキルが出てたりしていた


名前で大体の効果とかはわかるけど、前提スキルとかあって取り損ねたら目も当てれないしなぁ……


「なぁシズク。ジョブレベルが上がったら習得可能スキルが増えてたんだけど、どうしてなんだ?」


「えっと……本来、スキルは……ステータスさえ足りれば、勝手に習得できるんです」


チラリとフレイを見るシズクを見てああ、と納得する


確かにこいつはレベル1なのに多くのスキルを習得している


魔力ステータスがカンストしてるせいで上級魔法も習得出来てしまっているって事なのか


……MPなくて宝の持ち腐れだけどさ


「つまり、スキルを扱うのにステータスが必要ってことか?」


「はい……でも、ステータスが無くても……ジョブレベルをあげて……スキルポイントを使えば……スキルを使えます」


「なるほどな」


ステータスが低い俺はスキルを覚えるのにスキルポイントが必要になってくるわけか


「勿論……冒険者レベルが上がってステータスが上がれば、スキルポイントを使わずに勝手に習得できてしまうスキルもあります」


……となると、スキルポイントは出来るだけ上位のスキルに使っていきたいな


下位スキルは要求ステータスも少なくて済むだろうし


……問題はそのスキル習得に必要なステータスが載ってないって事だな


「カズヤさんの……習得できるスキルが増えたのはジョブレベルがあがったから……です」


「基本的に……ジョブレベルが高いほど、強いスキルを習得できるようになりますので……」


「最初の方にポイント使って上位スキル取ることは出来ないって事ね……」


「……はい」


「ありがとう。シズク。助かったよ」


「い、いえ……冒険者の基本を教えただけですので……」


「……あのさ」


「は、はい?」


「……俺も朝飯……頼んでいいですか……」


「ど、どうぞ……」


本当にごめんなさい!ちゃんと稼いだら返します!



-----


始まりの街スタート郊外



「障害物無し。見通しよし。好きなだけ魔法撃っていいぞ。フレイ」


「了解!」


「とりあえず上位魔法から順に魔法使ってみて、発動した魔法がお前のMP限界値だ」


「そうね……ファイヤーストームは駄目だったから……次はフレイムバーストね!」


「シズク……フレイムバーストって?」


「……火魔法でも……上位クラスの破壊力の魔法です……」


「灼熱の爆発により全てを無に還せ……フレイムバーースト!」


……撃てるわけないよね


そうして延々と魔法を唱え続けるフレイをよそに俺もスキルを考える



スキルポイントが10ポイントある


ジョブレベル1レベルにつき5P獲得できるようだ


見たところスキルの習得にかかるポイントはそれぞれ違う


さらにこのスキルポイントは習得済みスキルの強化にも使うらしい


俺の習得しているスキル二重攻撃ダブルスタブを強化するには1ポイントが必要と書いてある


スキル強化、スキル習得


これらのバランスはかなり大事だと思う


現段階の未習得スキルは……


背面攻撃バックスタブ2P

投擲1P

暗視1P

索敵2P

罠解除3P

隠蔽3P

盗難3P

技巧3P

光跳躍5P


これだけのスキルが出ている


名称だけで大体の効果はわかるのだが最後の光跳躍だけがイメージがつかない


そもそも盗賊と光っていうのが相反している


必要ポイントが一番高いという事実も気になるところだ


ポイントは出来るだけ貯めたいが、どれもこれも必須レベルに欲しいスキルばかり


序盤はすぐにジョブレベル上がるだろうしいっそ取れるだけ取ってみるか?


じゃあ、どれを取るか……MMORPGの鉄則に則ったモノを選ぶべきだ


索敵、暗視、罠解除、隠蔽、盗難


ここらは盗賊なら必須だろう


だがしかし……今現在のPTで必要かと言われれば微妙な所だ


まぁ、つまり、何だ……


俺は自分に言い聞かせるように指をあるスキルに当て、習得を押した


……と同時にとんでもない熱量をもった何かが俺の横に飛んできた


「ファイヤーランス!……あ……やった!見た!?見たカズヤ!今の!出たよ!」


その槍は俺の座っている横2mぐらいのところに刺さり地面を轟轟と燃やしている


「俺を殺す気かぁ!?」


「だって見てくれないんだもん」


「俺も自分のスキルを考えてたんだよ!」


「何か決めたの?」


「……ああ。一個はな」


「へえー見せて見せて!」


「……よし」


俺は自分の足に力を込め……大きく地面を蹴り……飛ぶ!



光跳躍フラッシュジャンプ


スキル発動と同時に俺の足元に魔法陣が浮かび上がりそれが身体をまるで押したかのように前へ弾き出される



「うわぁ!」


……急激な浮遊感


身体のバランスが保てない


フラフラと身体が揺れながらも5mぐらいの高さまで俺は飛び上がる


「2、2段ジャンプ!?」



フレイが驚きの表情を浮かべるのを見てちょっとだけ優越感のようなものに浸る


どうだ。ちょっと冒険者っぽいだろ


「どんなゲームにも言えることだが機動力ってのは狩りの生命線だからな!」


そんなことを得意気に言っていたら……体勢がさらに崩れる


「え?」


体がぐるりと回転し、頭が地面の方を向く


そして上昇しきった体は落下を始め……


「ふぎゃあああ」


俺は地面に衝突し、意識を手放すのだった……


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