3話
「ちょっとー、起きなさいよー?」
うるさい……
まだ俺の体内時計だと8時にもなってない
朝飯はいつも要らないって言ってるだろ……母さん
……母さん?
ガバリと身体を起こす
「……あんた何やってんの?」
目が覚めると、黒髪ロングの美少女がいた
「夢じゃなかった……」
「当たり前じゃない……ほら、今日も働くわよ」
「……明日から本気だす」
ゴロリと床に身体を寝転がすと
「やかましい!」
……神に踏まれてしまった
……いや、まて?
これはご褒美!?
黒ロン黒タイの美少女が俺を踏んでる!?
性格に難有りだが黙ってれば美少女のフレイが……!
あ、 ありがとうございます!ありがとうございます!
「……今、あんたの顔がとてつもなくイヤらしく染まってて反応に困るんだけど……」
「もっと踏んでください!フレイ様!」
「嫌よ!」
ああ!至高の時がぁ!
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「……おはよう、カズヤ」
「……おはようございますフレイ……様」
非常にまずい
怒ってるのが目に見える
「それで?」
これは……言い訳を聞いて貰えるんだろうか?
「いや、それはちょっと踏まれると言う二次元的なご褒美に目がくらみですね。いや、まさか俺もフレイにそんな感情を抱くとは思ってなかったんだけどさ!黒タイツの魔力には勝てなかったと言いますか!」
「そっちじゃないわよ!何で床で寝てるのよあんたは!」
「え?そっち?」
さっかの変態的行動について問い詰められてるのかと思いきやまさかのそっち?
……いや、はい
チキりました……
ベットの横までは行ったよ?
さらに言うなら掛け布団を捲るところまでは頑張った!
でも捲った瞬間このバカが「んっ……」とか寝息立てたせいで一瞬でベットから避難する羽目になったんだよ!
あれは駄目だって……
いい匂いしたしさ……
結局上手く寝付くことも出来ずに俺は床でゴロゴロしてたわけだ
そして寝付いたと思ったらこいつに叩き起こされたと
これが事の顛末だ
それなのに何故床で寝てたか?
……まさか本当に襲って欲しかったわけじゃなかろうな
いや、勿論それならそれでいいんだ
心置きなく頂くことが出来る
これはお互いのためだ!
仕方ないんだ!だから聞こう!
「……なぁフレイ」
「何?」
「お前って痴女なの?」
パンッと朝から快適な音が鳴り響くのであった
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「頬が痛い……今日はもう休もう」
「じ、自業自得じゃない!」
「でも、パーティー組んでくれる奴が来なさそうなんだけど?」
「そ、それは……」
そう……今俺たちはギルド「イリーナ」の一席でパーティーメンバーの募集をかけている
……なのだが、二時間近く待っても誰も来ない
モンスターがいる地点まで徒歩一時間
戦闘の事を考えると初討伐の俺達はそろそろ出発しなければ不味いだろう
何せ俺たちは戦闘経験がない
俺に至ってはスキルが一つしかない、それも初期スキルだ
今回の目当てはスライムゼリーの収穫のためのスライム狩り
スライムゼリー1個につき3G
金がない俺達にとってはこの狩りでせめて二、三日の生活費は稼いでおきたい
「……いい加減パンの耳以外のもの食べたいしな」
1Gで買った朝飯であるパンの耳かじりながらそんな事を言ってるとフレイの様子がおかしいことにきがつく
「……そんなに痛かった?【ヒール】かける?」
まるで悪戯が見つかった子供のように涙目になりながら上目遣いをしてくるフレイは容姿も相まってそりゃもう……
可愛いは正義
この言葉は俺の世界では名言であり至言であり真実である
「だいじょ…………」
「……カズヤ?」
だから俺は大丈夫だと言いそうになったのだが……
違和感に気がついた
……ん?
モンスター討伐の場所まで一時間?
……フレイはこのギルドで最初俺に何といった?
【この世界の野宿は法令により街の外でやることになるわ。つまり、レベル1のあんたは野宿したらまずモンスターにやられて死ぬわ】
野宿したらモンスターにやられて死ぬ?
町の付近にモンスターいないのに?
ん?
「……おい、フレイ」
「どうしたの?」
「お前、最初野宿したら死ぬって言ってたよな?」
「え?え?そ、そうよ?モンスターにやられちゃうわね!だから今日も働かないとね!」
「……一番近いスライムの生息地まで一時間かかるのにか?」
「い、いやそれは!夜になればあいつらだって町灯りに誘われてくるかもしれないじゃない?」
「……もしかして、宿に泊まらなくてもしばらくは生き残れるんじゃないのか?、そもそも法令は本当にあるのか?」
「だ、だだだ駄目よ!お風呂もトイレもない野宿なんて!耐えられないわ!あ!ちが……」
コイツ!この調子だと間違いなく法令も怪しい!
もっと詳しいことをこの街の人に聞いた方が絶対にいい!
RPGの鉄則は会話なのだ
それを疎かにしてコイツばかりに聞いていた俺が馬鹿だったのだ
もしかしたら冒険して命をかけずとも割りのいい仕事があるかもしれない
最悪今日は野宿でもいいから情報集めの日にしよう。受け付けに行ってメンバー募集の解除だ
立ち上がろうとした時、俺たちに声をかける人物が現れた
現れてしまった!
「あ、あの……パーティーの……募集を……見たんですけど……」
モジモジとして声も小さく、今にも逃げだしたそうに目線をあっちこっちに流している小動物っぽい少女が、そこにはいた