表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/9

2話

今回下品な描写があります

夕日が落ちる前の草原地帯


そこに二人の影がある


「カズヤ!次よ!」


「うおおおおおおおおお!」


猛々しい声を上げながら俺は斧を振りかざす


パキンっといい音がなり、それは両断される


「ナイスよ!流石魔法剣士ね!」


「……うん」


「次はこれよ!」


「どりゃああああ」


パキン


「素晴らしいわ!次よ!」


「……はい」


パキン


「気合が足りないわよ」


パキン


「……」


パキン


「黙ってたらだめよ!」


パキン


「あのさ……フレイ」


「どうしたの?早くその斧でこいつを真っ二つにしなさいよ」


「何で薪割りしてるんだよ俺達は!?冒険は!?ファンタジーなんだしレベル上げも兼ねて外出てスライムでも討伐に行くべきだろ!?」


「仕方ないじゃない。スライムの生息地は1時間は歩かないと行けないし、夜になったら他の魔物がウジャウジャと出るし」


「……それで何で薪割り」


「10薪一束を10束で1G、何とか宿代にはなるわよ」


「そうじゃねえよ!?いやそれも大事だけどさ!」


「ほーら、がんばれぇ」


「少しはお前も頑張ってくれよ……」


「イヤよ。私筋力1しかないし」


「……お前、俺を引っ張っていったときスゲェ馬鹿力だ……ったぁああああ」


スコーンとフレイの奴が俺の顔に向かって投げた薪が直撃する



「何すんだお前はああああ」


「乙女に向かって馬鹿力とか失礼じゃない!」


「失礼じゃねーよ!今思いっきり投げたよな!?それのが失礼だよ!?この筋肉だるま!」


「私は強化魔法使って身体強化してるだけだもん!筋肉じゃないもん!」


「ちょっとまてぇえ!?その身体強化俺にかけろよ!それあったらもっと楽だっただろこの薪割り!」


「イヤよ!そんな楽したらカズヤが駄目になるじゃない!」


「強化魔法を根底から否定するんじゃねえええええ」


「そもそもどうして冒険者ギルドにこんな仕事が来るんだよ」


「あら?力仕事なんだし、別に不自然じゃないと思うけど?」


「……あのギルドにあった依頼書に討伐系クエストが殆どなかったんだけど」


「だって魔王が倒されてからドンドン人間による魔物狩りが行われているもの。この近辺に賞金を出すほどの敵があまりいないのよ」


それでスライム討伐ですら1時間は歩かないといけないわけですか……


この世界で俺は毎日汗流して労働することになるの?


折角の異世界なのに?


ファンタジーなのに?


「そんなのイヤだああああ」


「それに、魔法剣士になれなかったカズヤがいきなり討伐に行くのは危険だと思うわよ?まぁ私は大丈夫だけど」


「……」


そうなのだ


俺は魔法剣士を志望したがステータスが足りなくてなれなかったのだ


ギルドにて提示された職リストで目に留まった魔法剣士


前衛も後衛も勤められる万能職


これに決めて勢いよく申し込んだらステータス不足という絶対的理由であっさりと断られてしまった


そして、俺の今のステータスで選べる冒険職は非常に限られていて選べたのが……


初心者

遊び人

盗賊

魔法使い


この4職だったのだ


だが魔法使いはこの魔力極振りの馬鹿神のせいで二人もいらない

初心者や遊び人は論外

戦士になりたかったのだが筋力パラメーターが足りなく、重装備ができないといわれてしまった

結果、軽装で小回りの利く盗賊となったのだ

……まぁ盗賊の上級職である怪盗になることが出来ればかなり強い恩恵があるのでいいのだが……


序盤はかなり不安だ


この世界には転職というものもあるらしく、ジョブレベルを犠牲に別の系統に職変えすることも出来るらしい


だから序盤は頑張ってレベリングをしてステータスを上げてそれから魔法剣士に……いや、せめて戦士で前線を張れれば一応パーティとしての形は出来ると思う


そしてコイツはというと……


「ほい。次」


パキン



魔法使いの上級職。火魔法使い……フレイムウィザードになった


しかもただのフレイムウィザードではない


何とコイツは火だけでなく水もある程度使え、さらに聖魔法も多少なら使えるというハイブリットだった


ギルドの人たちは勿論驚いているし、俺だって驚いた



「お疲れ様。これで丁度50束で5Gの儲けだね」


「マジで……疲れた……」


ぐったりとその場に倒れこむ俺にフレイがやれやれと前に出る


「しょうがないわねぇ。ほら、後ろ向きなさい」


「?」


言われるがまま後ろを向くとそっと肩にやわらかい指が乗る


「ふ、フレイ?」


「動かないの。肩揉んであげるから」


「あ、ああ」


ドキリとしながらその柔らかい指と後ろの女の子特有の匂いを感じる


横暴な態度とってる後に急に優しくされると困る


……というか緊張してしまう


だって俺童貞だよ?


女の子にこんな寄りかかるように近くで肩もまれるとか滅多にないよ?


「あ、あのさ、フレ……いってぇええええええええええええええ」


あまりに動揺して何か適当な話をしようとしたら思いっきり肩に痛みが走った


「ちょっと!暴れたら駄目じゃない!痛いほうが効くんだからね」


「いや待て、ギブギブギブ!お前絶対強化魔法使ってるだろこの力!まじで無理だめえええええ」



やっぱ、俺こいつ嫌い


そんな事を思いながら俺達はギルドに報酬を受け取りに行くのだった



-----


「……ボロい」


ギルドから報酬を受け取って宿についた第一声はそれだった


「当たり前でしょう?格安なんだから」


「いや、確かにそうだけどさ……」


絶対にこれ寒い


隙間風とかやばくて冬とか凍死するんじゃないだろうな


ボロボロの木小屋で出来た宿を見ながら今が夏であって助かったと思う


「……いや、今って何月なんだ?」


「心配しなくてもここはあんたが来た世界で言う8月8日よ」


「そっか。こっちにも季節とかあるのか?」


「あるわよ。日本に近いわ。冬になれば雪も降るし、それまでにこの小屋生活は脱出したいわね」


「今すぐ俺の更正を認めて帰らせてくれ……」


「駄目よ」


「……はぁ」


「ほら、文句言ってないで行くわよ」


「分かったよ……」



観念してその宿に入っていく俺は少しだけ安堵していたのだ


少なくともこれで少しはゆっくりとした時間が取れて頭を整理できると


だが、そんな願いは木っ端微塵に吹き飛ばされるのだった


「いらっしゃい。一部屋5Gだよ。二人なら10Gだな……」


「いえ、1部屋でいいです」


「はい!?」


店主が宿代を説明している所に爆弾発言を投下したフレイ


今、何ですと?


一部屋?あ、これってあれだ


俺が部屋の外で眠らされるパターンだ。もしくはソファーとか床とかそんな所で寝ろって言われるやつ


「ベッドは一部屋に一つしかないんだが、本当にいいんだな?」


「はい」


店主が念を入れてもフレイは平然としている


こいつ何考えてるの!?俺達男女だよ!


「ほら、行くわよカズヤ」


「ちょ、ちょっと待て!お前何しちゃってくれてるの!?一部屋っておま」


「お金が無いから仕方ないじゃない。それに、節約しないと明日のご飯すら食べれないわよ」


「いや、そりゃそうだけどさ」


「……心配しなくてもベッドを占領なんてしないわよ。あんた今日疲れてるんだから」


「確かにその心配も少しはしたがそれ以前にだ」


「なぁに?私に欲情したの?」


「んな!」


そんなもん当たり前だろうが!


お前は女で俺は男なんだぞ


……なんて面と向かって言うことが出来ないヘタレな俺は項垂れる


「ふふふ。ごめんね。意地悪しすぎたかしら?」


「……どうなっても知らんぞ」


俺は辛うじてそう答えるのが精一杯だった


-----


「この宿には共同だけどお風呂とトイレもあるのよ。勿論男女別でね」


部屋に入り一息ついたところでフレイが風呂に入ろうと提案してきた


その提案は俺にとってもありがたい


とにかく今は一人になりたかった


考えを纏めて、それでこれからどうするかも思案しなければならない


だから俺は風呂を借りるためにカウンターにいってサービスのタオルを2人分借りに行くことにした


「すいません。入浴したいのでタオルをお借りしたいんですが」


「おう。二人分でいいかい?」


「はい」


「ほれ。使い終わったタオルは脱衣所の籠にぶち込んどいてくれ」


「わかりました」


「あー……後な坊主」


「?はい」


「お前、どうも駆け出しみたいだが、持つもん持ってんのか?」


「?何をですか?」


金なら前払いで払っているからそれじゃないはずだし


もしかすると冒険者ってのは共通の何かを持たないと駄目だとかあるのだろうか?


いや、冒険者カードはさっきちゃんと提示したし……


「そりゃお前。いくら若いって言ってもパーティメンバーが抜けることになったら大変だろうが」


「そりゃ。まぁ」


……何だろう。若い?メンバーが抜ける?


というかメンバーは俺とフレイしかいないんだが……


そうだ、明日はメンバー募集して討伐に行くのがいいかもな


俺達二人だと危険だけどある程度なれた冒険者が一緒に行ってくれるなら心強い


「……子作りの時使う道具はもってんのかって言ってんだよ。流石に付けないと色々まずいだろ?」


「何言ってんだあんたはあああ!?」


「みなまで言うな!大丈夫だ。持ってないなら俺が特別にサービスしてやる。だが、あまりはしゃいで隣の部屋の冒険者に睨まれないようにな?」


「俺とあいつはそんな関係じゃないです!」


結局店主の誤解を解いて風呂に入ってる間


ずっとフレイの事を意識してしまいまともに考えることができなかった


-----


「……やばい」


風呂から上がった俺は随分とソワソワしていた


まぁ原因はわかってるんだけどさ


だってこれから風呂上りのフレイが来るんだよ!?


不味い


絶対に不味い


確実にこの動悸を抑えないととんでもない事に……



「うああああああ」


ガリガリと頭を掻いているとガチャリと立て付けの悪いドアが開く


「何やってんのあんた?」


そこに現れたのは黒い長髪の女の子


暗い部屋でも月明かりを反射しキラキラと輝く黒い髪の……


「だ、誰ですか?」


「何言ってるのよ、カズヤ」


俺は今日何度目かわからない疑問に頭を悩ませることになるのだった


「その頭だよ!何?あの赤い髪はズラだったわけ!?」


「そんな訳無いでしょうが、後そんなに騒ぐと……」


その瞬間壁がドンと大きな音を鳴らすと共に怒鳴り声が聞こえてきた


「うっせーぞ!静かにしろぉ!」


「ひぃ!ごめんなさい!」


「そりゃ怒られるわよ」


呆れ顔のフレイに兎に角色々聞きたいのだ


この世界の事や、フレイの事


俺の世界に戻るちゃんとした基準


この世界の安全性


その他諸々だ


「えーっと、髪って言ってたわね?あれは神気を纏っていると髪が赤くなってるのよ。これでも火の神の見習いだしね」


「見習い?」


「その話はいいわ。兎に角、神気を纏ってるのって疲れるのよ。だから寝るときはこうして解除してるわけ」


「じゃあ本来の地毛はそっちって訳か」


「そうなるわね。他に質問は?」


そう言いながらトコトコと歩きベッドに潜っていく


……俺どうすればいいんすか


これって誘われてるんですか


襲えって事ですか


いやいやいや、待て待て待て


「この世界って結局何なんだ?魔王がいないと思ったら魔物はいるみたいだし、平和ってのは平和なんだよな?」


「……逆よ」


「え?」


「今のカズヤに言っても駄目だけどね。絶対に逃げるし」


「おい。むしろその一言で逃げたくなったぞ」


「いいから、早く来なさいよ」


「……え?」


「何呆けているの?ベッド、半分はあんたのなんだからね」


ゴソゴソと端に寄りながらこの神様はそんな事を言いのける


……いいんですね?


そこまでされて何もしない俺じゃないですよ?


「明日も早いし、さっさと寝て朝からギルドに行くわよー」


「お、おい」


ふわぁぁと欠伸をしてさっさと寝る体勢に入ってしまうフレイ


まだ他にも聞きたいこともあるんだが……


「……どうするんだよ。これ」


神様の許可は下りている


このベットの半分は使っていいと


つまり大義名分の下に俺はそのベットに潜り込み寝ていいということになる


さらに言うと、不慮の事故で身体が寝返りをうってしまい接触してもそれは仕方ない


ああ、仕方ない!


例えばそれによって如何わしい場所を触ることになったとしてもそれは不可抗力


そう!不可抗力なのだ!


きっと訴えられても勝てる!これ以上の条件など無い!


さぁいけ進藤和也17歳童貞ニート!あの2つの大きなエレベストを目指して!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ