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第1話



「……ここ、何処」


周りを見渡しつつ呟く


どう見ても現代日本とは違う服装


明らかに武器とわかる大剣を担ぐ戦士っぽい人


杖持っててくてくと歩いてる魔法使いっぽい人


ありゃ盗賊か?軽装にナイフを腰に帯刀している


そんな人々が賑わうマーケットのような場所を歩いている


そんな風景は俺がよくアニメやゲームで見ていたファンタジーゲームの世界の街そのものであり……


え……?まじでここ……異世界?


異世界に来ちゃったの?


「始まりの街、スタートよ」


「まんまだな……おい」


「そりゃそうよ。難しい事なんてないわ」


フレイと名乗った自称神がそんな事を言いながら胸を張る


……そのでかい胸が強調されてちょっと……いやかなりいいです!はい!


もっともっと!


「……犯罪の匂いがするわね」


「いや、あのさ。元の世界に戻してくれよ……頼むから」


「無理よ?」


「どうして。俺は死んだわけじゃないんだろ」


「死んだような生活してるじゃない」


「いや、確かにそうだけどまだ死んだわけじゃないんだろ?」


「ここでやる事をやれば帰れるわよ」


「ようはゲームをクリアしろってことか……?」


「……そうね。あなたに合わせて言うならばこのゲームをクリアして貰うまで帰れないわ。貴方も……私もね」


このドヤ顔がムカつく……殴りたい。この笑顔


「……まさか魔王を倒せっていうわけじゃないだろうな」


こんなわかりやすいファンタジー空間に連れてこられたら誰だってそう思う


だがこの神さまはとんでもない事を言いやがった


「ううん。だってもう魔王は倒されているもの」


「帰る」


「なんでよ!?魔王倒されてイージーモードなのよ!?アレなの?カズヤってМなの!?ドМなの!?ハードモードしか選ばないの!?」


「やかましい!魔王倒されてるのに呼ばれるってことは絶対にそれ以上に面倒なことに巻き込まれるに決まってるだろ!?」


「そんな面倒な事じゃないわよ!?いや、確かにかなり面倒だけどね!」


「ほら見ろ!一体俺に何をさせようってんだ!」


「……カズヤ。あなたにはこれからこの世界で冒険者として生き残って貰うわ……」


「……はい?」


「そう、あなたはニートだった」


「……ん?」


「あなたにはここで生き延びて、そのニート体質を更生して貰うわ!」


「……はぁあああああ!?」


「これが、あなたのゲームクリアの条件、あなたの人生の更生よ」


「そんな曖昧なクリア条件があってたまるかぁ!」


俺の更生?


いや、何をもって更生というのだ、この馬鹿神は


そもそもどこを更生するんだ?学校に行くようになればいいのか?


いや、それだとこの世界でその条件をクリアすることはできない


つまり、俺の発言行動その他もろもろで判断されるってことだろう


だがしかし、だがしかしだ。それには非常に時間がかかる


上っ面だけの発言や行動で返してもらえるなんて思わないし思えない


わざわざこんな舞台まで用意されているんだ


絶対に長引く


長引くと俺のネトゲの会合に遅れる


つまりギルド追放の危機


「更生した!今、ほら!更生した!学校にも行くし家事の手伝いだってする!だから現実に帰してくれ!」


「だめよ。ほら、まずは冒険者ギルドに行って登録してくるわよ」


「嫌だあああ俺のギルドは向こうの世界にあるんだああ!」



ズルズルと腕を引っ張られるのに必死に抵抗しつつ叫ぶ


人目とか一切気にせず叫ぶ


なのにビクともしない、こいつ馬鹿力だ



「現実世界は一旦諦めてこっちに集中しなさい?じゃないと死ぬわよ?」


「え?」


そんな一言により俺は固まることになるのだった


---


冒険者ギルド 「イリーナ」



そこは始まりの街というだけあって駆け出しの冒険者が大量にいた


あるものは今日の獲物の話を


あるものはこれからの獲物の話を


あるものはパーティを募集を


そしてあるものは……



「嫌だ!帰る!無理だって!だって皆超怖いじゃん!」


「いい加減腹括りなさいよ!あんた男でしょ!」


「いや、無理だって!」


……冒険者への登録をひたすら拒んでいた


「あのねぇ……言っておくけど、あなた、ここで仕事しないと一文無しなのよ」


「……」


「この世界の野宿は法令により街の外でやることになるわ。つまり、レベル1のあんたは野宿したらまずモンスターにやられて死ぬわ」


「……えっと」


「もちろんご飯だってただで食べれるわけがないわ。つまり毎日最低でも宿代と食費は稼がないと生きていけないのよ」


「……」


「さっきも言ったけど、この世界で死ぬとそれはそのまま現実で死ぬことになるわ、というかその身体は元の世界から持ってきているんだから当然よね?」


「なんつー世界に連れてきてくれたんだよ!?」


「ニートなのがいけないのよ」


「全国のニートに謝れ!?頑張ってるんだからな!」


「はいはい。あんたらが頑張ってるのは気配の消し方と気配の察知方法ぐらいでしょ」


こいつ絶対いつか泣かせてやる


いや、大体あってるだけどね……


「ほら、これ、志願書。仕事の斡旋や初心者装備と支援金として3G貰えるわ」


「……3Gってのはちなみにこの世界だとどれぐらいの価値なんだ?」


「1食分ね。ちなみに冒険者用の格安宿が一泊5Gよ」


足りねえじゃねえか!ちくしょう!


つまり登録してすぐに仕事を受けてそれで最低でも2Gは稼がないと飢えた状態で外に放り出されるってわけね!?


一日ぐらい休みをくれてもいいんじゃないですかね!


俺はもうヤケクソ気味に志願書にサインをしていく……




※怪我や事故、戦闘により死亡した場合でも当ギルドは責任を負いません




……ブラック企業に志願してる気分だよ!



---


「初めまして!新たなる冒険者様!」


「ど、どうも」


「志願書を受理させて頂きましたので、冒険者様へ装備の一式と支援金をお渡しいたします」


「ありがとうございます」


「それではまず、職業適正チェックに入ります。こちらのカードに署名して頂き、念じてみてください」


お。ファンタジー要素じゃん


こういうのって初期ステータスとかも重要なんだよな


カードを受け取り署名をして……念?念ってなに?


とりあえず力込めてみるか


「ふんっ!……おお!?」


カードにぼんやりとステータスのようなものが浮かび上がってくる


やばい、結構たのしいこれ


ハマる


この高揚感は新作ゲームをまったく下調べせずに買ったときのあのドキドキに似ている


「それではカードを拝見させていただきます……これは……」


思わずゴクリと喉を鳴らしてしまう


「……随分と低……いえ、これからの成長が楽しみなステータスですね!」


「低いって言ってよ!?そこまで出ちゃったならもういっそ清々しいくらいに駄目なステータスだって言ってくれよ!?」


「し、失礼しました。ですが、全てが平均的ですので逆に職を選べるという利点がありますよ!」


「そ。そうか。確かにそれはいい事ですよね」


あまりに悲しい自分のステータスに嫌気がさすがこの世界の事が全くわからない以上職ぐらいはしっかりと選びたい


それが出来ると言うならそれは有り難い


……後はどの職がいいのかってのが分かればいいんだけどな


そこまで考えていると後ろからフレイが出てくる


「ふふん。随分と粗末なステータスになってたようね。まぁニートだし仕方ないわね」


「このやろう……」


この神をどうにか痛い目に合わせられないかと考えていると職員のお姉さんが声をあげた


「ま、魔力がカンスト!?こんな数値見たことないですよ!?あ、で、でも他は1しかないなんて……」


「極振り最強よ!」


そんなゲームをやってる人しか知らないことを偉そうに言い張る神をどうやって外に捨ててやろうか……


というか、魔力がカンストしてても他が1って実は相当ピーキーなんじゃ……


「か、過去最強の魔法使いの誕生ですよ!冒険者フレイ様!願わくば魔王討伐以前に貴女のような人が現れていれば……」


俺の考えはこの世界では通用しないのかギルドの職員はおろか周りの冒険者まで随分と活気付いていた


あれ?俺は?一緒にきた俺ってどうなんですか?いや、うん……仕方ないよね。平均以下のゴミ虫だもんね


フレイはこっちを振り返り俺に向かって思いっきりピースして笑いやがった


その笑顔はちょっとばかしやっぱり可愛くて


けどむかついて


……とにかくだ


「……リセマラさせろおおおおおおお!」



俺の叫びがギルドに木霊するのだった


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