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6 チュートリアル

「品揃え豊富とか言っていた割に、全部イマイチじゃない。魔法なんて別に要らない気がしてきたわ」と私は言った。だって、まともなのがないのだもの。品揃えを自慢するなら、せめてコンビニくらいは商品を用意するべきだ。


「魔法は、奥深いのですよ。まだ、魔法の基本中の基本、まぁ、基本にして奥義でもあるのですが、火・水・風・土の基本四元素の魔法しか説明してません。他にも沢山あります!」と巫女は不機嫌そうに言う。あ、プライドを傷つけてしまったかもしれない。


「じゃあ、もっと便利そうで有用なものはないの?」と私は聞く。


「それでは逆に、モニカさんが便利だと思うような魔法はなんですか? こんなことできたらいいなぁ、というようなもので結構ですよ。魔法は奧も深く、幅も広いのです。それに、魔法属性の種類も多いので、全てを説明しきれません。それに、モニカさんは細かい性格なようですから、魔法属性を一つ一つ説明する際に、その属性の系統図を全て説明しなきゃならないハメになりそうです。きっと、モニカさんはそんな性格だから、行き遅れているんですよ!」


「は? いまなんて言った? コラぁ!!」


「ひぃー。すみません。何も言っていません」


「ちゃんと聞こえたわよ。次、その話をしたら叩くからね」


「はい、分かりました!」と言って、巫女は敬礼をした。巫女服で軍隊式の敬礼をされても締まらない。間の抜けた感じがするのだけれど……。


「まぁいいわ。ところで系統図ってなに? 系統図法とか系統樹の系統と同じ?」


「はいそうです。魔法にも同様のものがあります。レベルに応じて系統図が進んでいくのです。例えば、火魔法ですと、レベル1だとライター程度の炎しか操れませんが、レベルが上がっていくに連れて火炎放射器なみの火力が出せるようになります。そして、最終的には……」


「都市を火の海にするようなこともできるようになるって訳ね。分かったわ。でも、私、系統図には興味がないわ。生活するのにあまり関係無さそうですもの。それよりも、こんなことできたらいいなっていうの、思い付いたわよ」


「え? 早いですね。どんなことですか?」


「それはね、私、低気圧になると頭痛がする体質なの。それをなんとか出来ないかな? って思ったの。その奥深く幅も広い魔法とやらでさ」


「なんですか、そのピンポイント過ぎる魔法は……。低気圧性の頭痛を治す魔法ですか……。正直に申し上げると、○ファリンを飲んだ方が早いと思うのですけど?」と巫女はかなり不満そうだ。


「出来ないなら別にいいわよ。科学万能主義の時代に、魔法だなんてナンセンスだもの」と私は言う。だって、最初から期待してないし。

 巫女は、何も答えなかった。眉間に皺を寄せて考え込んでいる。必死に考えているのだろうか。


「すみません。探しましたが、そんな魔法はありませんでした。そもそも、低気圧による頭痛って、体質的なものじゃないですか。そして、死ぬわけでもないですし。そんなくだらない魔法を開発するくらいなら、白血病や癌を根絶する魔法の研究開発に力を入れていますよ」


「じゃあ魔法はいらないわ」と私は言った。


「あっ、でも待ってください。駄目で元々で、巫女巫女ミュニケーションの掲示板に書き込みして聞いてみます。ナイスなアイディアが貰えるかもしれませんよ。回答が来るまで、ただ待っているのもなんですから、チュートリアルを続けますね。モニカさん、これを飲み干してください」と巫女は裾から小さな醤油差しのような壺を取り出した。私はそれを受け取る。


「これは何?」


「コニャックです」


「は? お酒? 昼間からお酒を飲めと?」


「違いますよ! アルコールは入っていません。これは、翻訳コニャックというアイテムです。これを飲めば、この世界の言語の読み書きもできるようになるんです」


「でも、私、英語と中国語は大丈夫よ?」


 英語は業務で使う。それに、会社が工場を中国に移したりもした。出張も多いし、ビジネス会話程度なら英語も中国語もできる。

 日本語、英語、中国語を出来たら、まぁ、40億人くらいとはコミュニケーションが取れるはずだ。


「いや、世界が違うので、まったく言語体系が……。宇宙人と会話すると考えてください」


「宇宙人……。それだと、会話は無理そうね」と私は言って、それを飲み干した。


「意外と美味しいわね。栄養ドリンクに近い味かしら」と私は言った。


「さすがモニカさんです。タウリンが1000㎖入っているんですよ!」と巫女がどや顔で言った。

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