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54 魔王討伐、そして……

 楽しい時間はあっという間に過ぎるのに、退屈な時間はなかなか過ぎることがない、とよく言われるが、その通りだと思う。訓練の時間というのは、キツイし、筋肉痛にもなるし、そしてずっと剣を構え続けるという忍耐と気力を要することも多い。退屈な部類に入ると思うのだけれども、訓練の時間は、あっという間に過ぎてしまう。


 訓練後の昼食の楽しいひと時、木陰で食後のお昼寝の後の、地獄のような無酸素運動。ギルドの庭、約30メートルを行きは全力疾走で、帰りは呼吸を整えながらゆっくりと歩く。そして、また行きでダッシュというインターバルトレーニングのようなことを100往復したりする。私が100往復、つまり1セットしている間に、マカイラスさんとトクソさんはそれを3セット終わらせてしまう。

 私も全力で走って行かれるのだけど、颯爽さっそうと私を追い抜いて行くマカイラスさん。すれ違いざまに「体が左右にぶれてるぞ」とか「頑張ってるな」とか「あと少しだ」とか、私が挫けそうになっているときに、見計らったように声を掛けてきてくれる。言われると、なんとなく頑張れる気がしてくるのは、私だけの秘密。


 夕食を終え、宿に帰ると、受付の前の床をターシャちゃんが掃除していた。


「あ、モニカさん。今日もお疲れ様でした。お風呂の用意が出来ていますよ」と、ターシャちゃんは顔を上げる。お風呂は、別料金銅貨5枚だ。この宿の一泊と同じ料金ということになる。入湯税が馬鹿高いのかも知らないけれど、宿の一泊と同じ値段って高い気がする。源泉掛け流しというわけでもないし。


「ただいま。ターシャちゃんも大変ね」と私は掃除をしているターシャちゃんに言った。

 水が入った桶と、ターシャちゃんの手には、雑巾らしきもの。床を濡れ拭きしているのだろう。砂って細かいくせに、木製の床とかだとザラッとしていて、滑りやすい。砂って、無駄に自己主張が強いと思う。


「毎日掃除をしているんですけどね。この町は砂っぽいので、砂がどうしても床に上がってしまうんですよね。ほうきで掃いても、どうしても砂が残ってしまって」とターシャちゃんが言う。


「行儀の悪い冒険者が、靴底の砂を落としていないのではないかしら。ちゃんと、玄関で砂を落としてから宿に入ってください、とか、張り紙でもしてみたら?」と私は言う。


「え、ええ。でも…… お客様のほとんどが冒険者の方ですし、仕方ないかなと思っています」とターシャちゃんは答える。


「それもそうよね。客商売ですものね。ごめんなさい、軽はずみなこと言っちゃったりなんかして。それにしても、こんな広い床を毎日濡れ拭きするのは大変でしょう。掃除機使えば、楽になるんじゃないかしら?」と私は言う。箒で掃いた後、掃除機で細かい砂を吸い取れば、濡れ雑巾で拭きとっていくよりも効率的に思える。


「掃除機ってなんですか? 魔法器ですか?」と、雑巾をバケツの上で絞りながらターシャちゃんが私に聞く。

 私は、そっか、と思う。掃除機が発明されていないのか。そもそも、電気がないしね。


「便利な道具よ」と私は答える。そして、ふと思う。私の魔法で、掃除機って作れないかしらと。掃除機は、モーターで空気を排出して気圧の高低差を作り出し、ホースから空気が流れ込むようにする仕組みだったはずだった。その吸引力で、ゴミを吸い込んでいくはず。サイクロン掃除機の仕組みとかは知らないけれど、私の家にある掃除機はそんな感じだった。

 私の魔法で、結界の中を真空にして、結界の一部に穴をあければ、結界の中に空気が流れ込んでいくはずだ。その発生する気流をうまくホースにつなけば、ゴミを吸引する気流となるのではないだろうか。

 私って、天才かも知れない……。

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