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47 魔王討伐、そして……

 セーブクリスタルの所まで戻った私達。帰り道は、行きよりも楽だった。私達3人が通る道は、けもの道とでも呼べば良い道が出来ている。私達3人が魔王城へ目指す際に作った道だ。地面や背の低い草は踏み固められているし、通るのにどうしても邪魔な小枝などは既にマカイラスさんが行きの道のりで切り落としてくれている。森の枝を切ることに関して、トクソさんはあまりいい顔をしなかったけどね。


 セーブクリスタルの所までの所要時間は、行きよりも1時間程短縮されているように思える。


「やっと元の場所まで戻れたわね」と私は言う。息はあがったままだけれど、疲れは急速に引いていく。セーブクリスタルの影響だろう。水晶石の光に当たると、太ももやふくはぎに、遠赤外線を当てているかのように暖かくなる。血行が良くなっているというのが如実に分かる。刃のある葉や、棘のある植物によってできた、手の甲や二の腕の傷も痛みが引いていく。


「では、さっそく転送するぞ」とトクソさんが言う。


「え? あなたも出来るの?」と私は聞く。それなら、なぜ、わざわざここまで歩いてきたのか分からない。ただの歩き損ではないか。


「出来るにはできるが、1度に2人までが限界だ」とトクソさんは答えた。トクソさん1人で、2人を送ることができるというのは、エイラトの街で私達を転送した魔術師よりもすごいのではないだろうか。あっちは5人で2人だったし。ただ、疑問が浮かぶ。


「でも、自分で出来るなら、なんでわざわざここまで歩いてきたの? それに、街の魔術師の魔力の回復なんて待つ必要がなかったんじゃないかと思うわ。自分で飛んでくればよかったじゃない」と私は言う。いろいろと魔王城へ向かう装備を調えてくれていたということは知っているが、自分で来れるなら、準備が終わった段階でこちらに来れたはずだ。少なくともそうしてくれれば、私は恥ずかしい所を見られずに済んだ。


「理由はいくつかある。お前達が転送された後、すぐにここに来なかったのは、お前達がどんな状況の場所に飛ばされたのか分からなかったからだ。確かにお前の言う通り、自分で来ることができた。しかし、自分の魔力の半分を削って、敵に囲まれているかも知れない所に行くのは愚かな行為だ。なぜ、あの崖で街へと転移しなかったのかということだが、俺の魔力の問題だ。2人を転移させると、俺の魔力は枯渇する。そんな状況で魔物と出会いたくないからな。ここなら、セーブクリスタルの影響で、魔物は近づけないからな。俺が安全に魔力を回復できる。お前を置いていってもよかったのなら、あの場所でさっさと街に帰っていたさ」とトクソさんは答える。


「そうだったの……。でも、そうならそう言って欲しいわ」と私は言う。言われないとそんなことわからないじゃない、と思う。


「そんなの言わなくても分かって当然だろう」とトクソさんが言う。

 そうなの? と思いながらマカイラスさんを見たら、彼は困った顔をして「まぁ、疑問に思ったことは聞いてくれ。お前は当たり前のことを知らなさすぎる」と言った。


「まぁ、そういった話は後にしよう。転送するぞ。あとモニカ、背嚢は置いていけ。余計な魔力を消費したくない」とトクソさんに言われ、私は背嚢を地面に落とす。


「これ、どうするの?」と私はあごで背嚢を示したら「これは捨てていく」とマカイラスさんが言った。もったいないなぁと思っているうちに、眩しい光が目に入ってきたので私は目を閉じた。

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