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38 魔王討伐、そして……

 トクソさんが消えてから待つこと15分くらい。彼は大きなネズミを捕まえて来た。カピバラくらいの大きなネズミだ。ただし、カピパラのように可愛い感じではない。目が異様に真っ赤だし、剥き出しの前歯で咬まれたら、手首を丸ごと千切られてしまいそうだ。


「待たせたな。こいつで良いだろう?」とトクソさんは言って、地面にそれを放り投げた。

 逃げるんじゃないかと思ったけれど、ご丁寧に前両足と後両足を紐で縛ってあって、ネズミは横たわって、キィキィと呻き声のような鳴き声を上げながらばたばたと足を前後に動かすだけだった。


 え? これを私にどうしろと? と思っていたら、「モニカ、やってみろ」と2人から言われる。


 仕方なく、私も気圧魔法を使うことにした。トクソさんが戻ってくるまでの間、私が考えたことは、鳥に使った時とサイクロプスに使った時の違いだ。思い当たった答えは、私のイメージする気圧の高低だ。鳥を生け捕りにする際には、富士山山頂の気圧をイメージしていた。サイクロプスに使った時は、世界最高峰であるエベレスト、もしくはそれ以下というイメージで無我夢中で魔法を使った。その差異以外に、私が思い当たった違いは無かった。気圧をできる限り低くするというイメージで魔法を使えば、サイクロプスに対して魔法を使った時と似た状況を再現できるのではないかと思う。


「それじゃあ使うわよ。結界は最小限にするけど、念のため2人は離れていて」と私は言って、魔法を発動した。


 私が気圧魔法を発動させると、鳴き声は聞こえなった。おそらくネズミは絶命したのだろう。気圧を下げて、酸素も薄くなってしまっただろうから、窒息死ということになるのだろうか。気圧を下げたら、酸欠にはなるだろうとは思っていたし、予想通りと言えば予想通りだけれど、予想していただけに、私の気分は最悪だ。間違いなく私が殺した。本当に気分が最悪だ。


「ねぇ、もうこれでいいでしょ」と2人に声を掛ける。早く魔法を解除して、せめて弔ってあげたい。


「いや、待て。サイクロプスのような状況になってからだ」とマカイラスさんが言いながら「モニカ、見てみろ」と言われた。私が目を閉じていたことはばれていたらしい。


 目を開けて私は後悔した。サイクロプスと同じ状況だった。偶然だと思うけれど、飛び出た目玉と私は目が合ってしまった。目が合ってしまった私は蛇に睨まれた蛙のように固まってしまう。目を閉じることもできない。飛び出た目玉にぶくぶくと無数の気泡が出来き、その気泡が弾けそうと思った瞬間、気泡が急速に萎んだ。


「モニカ、もういいだろう。魔法を解除しろ」とマカイラスさんの声が聞こえ、私は魔法を解除すると同時に腰が抜けて地面に座り込んでしまった。


「サイクロプス達と同じ状況になったな」とトクソさんの冷静な声が私の頭に響く。


「モニカ、魔法は間違いなく解除しているか?」というマカイラスさんの声が聞こえた。本当に聞こえているだけで、私はその言葉の意味するところを理解していない。


「おい、モニカ、大丈夫か」とマカイラスさんが両手で私の両肩を掴み、私をぐらぐらと揺らす。それに連動して私の頭も上下に揺れる。私の視野には、地面と水晶石と空が順々に映る。


「おい」というマカイラスさんの声と共に、鎖骨に鋭い痛みが走る。「痛い」という声を私はどうやら声帯から無意識に発したらしく、そのあと私は気を取り直した。

 マカイラスさんが手を離した後も、鎖骨とキンキンと痛みが響く。マカイラスさんの握力が強すぎたのだろう。骨にひびでも入ったのではないかと心配になる。


「結界は解除されているようだ」というトクソさんの声が聞こえた。


「あ、魔法は解除しています」と私も続いて声を発した。

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