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16 都市防衛クエスト

 私は目を覚ます。カーテンを開けると、眩しい太陽の光と大通りに人の往来が見える。

 昨日は、宿に着いた後、夕食も食べずにそのまま寝てしまった。空腹を感じながら熱いシャワーを浴びる。あたた、腰が痛いや。宿の受付の子が、布団をさらに2枚重ねていてくれていたが、どうやら逆に柔らかくなり過ぎたようで、逆に腰が痛くなった。布団を3枚下に引くのは、止めておいた方が良いかもしれない。かといって、1枚じゃ固くて寝心地が悪いだろうし、今日は布団2枚を下に重ねて寝てみようと考える。


 ・


 身支度を終え、宿で朝食を取ってから冒険者ギルドへと向かう。

 ちなみに、朝食は黒糖パンとキャベツスープだった。「黒糖パンを出すなんて、値段の割に凝った料理を出すのね、この宿」と労いの言葉を受付の女の子に言ったら、女の子はポカンとしていた。「向かいのパン屋の一番安いパンですけど……」と困惑気味に返答され、女の子はしょんぼりしてしまった。どうやら、私が嫌味を言ったみたいな感じになってしまった。

 いやいや、違うんだって。「沖縄とか鹿児島とかじゃ知らないけれど、関東って、砂糖と言ったら白砂糖じゃない? パン屋でも黒糖パンとか売っているのを見かけたりもするけど、黒糖使用っていう付加価値がついていて、少し高めの値段設定になるでしょ? だからあまり食べたことがなかったのよ。久しぶりに食べて、やっぱり美味しいなぁなんて思ったの。そう、つまり美味しかったの。純粋に。それは分かってくれるわよね?」と一応フォローをして足早に宿を出たけれど、冷静に考えたら、宿の女の子、私の言ったことの8割も理解できないんじゃないかと思う。異世界の人になんて意味不明なことを言っているのだとため息をつきながら歩いていたら、冒険者ギルドに到着した。


 ギルドの中に入り、マカイラスの姿を探す。昨日、アナウサギの巣穴からの帰り道にマカイラスと冒険者ギルドで待ち合わせの約束をしたのだ。冒険者のいろはを教えてくれるらしい。


 奧のテーブルにマカイラスの姿があった。彼はすでに私の姿を見つけていたようで、私に向かって手を振っている。


「おはようございます」と私も同じテーブルに着く。


「随分と遅かったじゃねぇか」とマカイラスさんは不機嫌な様子。


「あらそう? まだ、朝の7時くらいじゃないの?」


「いや、とっくに陽が昇っているって意味だよ。お前、アナウサギを生け捕りにするんだろ? 太陽が昇る前じゃないと、奴らは巣穴から出ないと昨日言わなかったか?」


「あ、ごめんなさい。完全に忘れてたわ。でも、そうすると暗いうちから出発しなきゃだめね。巣穴まで歩いて私の足だと1時間近くかかるだろうし。相当早起きしなきゃだめね。あ、でも携帯の電源、切れちゃったんだよね。私、携帯を目覚ましとしても使っていたから……。ねぇ、目覚まし時計って何処がで売ってるの?」と私は聞いた。


「なに分けの分からないことを言ってやがるんだ。まぁいい。どっちにしろ今日は、ギルドでお勉強だ。あとは裏で訓練だ。見た感じ、身を守る術も無さそうだしな。近づく獣を斬るくらいのことはできないと、食われて死ぬぞ」とマカイラスは恐い顔で言う。


「分かったわ。ご指導ご鞭撻の程よろしくお願いいたします」と私は頭を下げる。


「そんなに畏まらないでいいぜ。こっちも暇だからやっているようなものだしな。さっそく本題だ。まずは基本中の基本、魔法についてだ。モニカ、お前何が使えるんだ?」


「魔法よね? 一応、気圧魔法っていうことになっているけど」と私は小声で言った。だって、私、魔法使えますなんて、堂々と言える筈がないじゃない。頭おかしい人って思われそうで恥ずかしい。


「気圧魔法だと?」とマカイラスが大声を上げる。


「え? 知ってるの?」


「いや、初めて聞いた。なんだそりゃ? 何が出来るんだ?」と興味無さそうにマカイラスが聞く。


「えっと、私の周りの気圧を安定させるの。一応、一度呪文を唱えれば、ずっと自動で使い続けられるらしいしわ。今も、たぶん私は使っている状態なのだと思うわ」と私は自信なく答える。


「自分の魔法なのに、なんでそんなに曖昧なんだよ。まぁいい。気圧を安定させるって、どういうことだ? 意味が分からない。もっと分かりやすく説明してくれないか?」とマカイラスは言った。


 あ、この世界にはまだ、気圧とかの概念がないのかも知れないと気づく。『私達が呼吸をしている空気にも重さがあって、それが私達の体を絶えず押しているのよ。それを大気圧と言うの。大体、0.1MPaの圧力がかかっているわ。正確に言えば、温度0°において、766mmの高さの水銀柱がその底面に及ぼす圧力で、760mmHgだから、1013hPaね。それが気圧よ』と説明しても、たぶん理解して貰えないだろう。言葉を選ぶ必要があるだろう。


「えっと、雨が降ったりとか天気が悪くなると、頭痛くなったりするでしょ? 肩が凝ったり」


「いや、俺はならないが」と切り返すマカイラスさん。


「そうなる人がいるの。そして私もそうなの。それを防いでくれる魔法よ」と私は説明する。


「それで?」


「それだけなんだけど」と私は言う。


「お前、それでよく冒険者になろうなんて考えたな。街で仕事を探した方がいいんじゃないか?」とマカイラスは随分と呆れているようだ。


「当面、ここで生活しなきゃいけなくなったから、お金を稼ぐ必要があるのよ。別に好きで冒険者になったわけじゃないわよ」と私は言う。とりあえず、食いつなぐには働くことが必要で、そのために冒険者になっただけだ。巫女のアドバイスに従ってだけど……。あの巫女のことを信用した私が悪かった気がしてきた……。


「まぁいい。あまり役立ちそうにない魔法属性の奴でも、剣や弓矢の腕前だけで活躍している奴は沢山いるしな。これ以上、魔法のことを話しても無駄だろうな。よし、裏に行くぞ」とマカイラスは立ち上がって、ギルド奧にある扉から外へ出て行ってしまった。私も、それに慌てて着いていた。

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