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12 冒険者ギルド

 ギルドの掲示板を見ながら案件を物色する。<討伐依頼>は全てスルー。<護衛依頼>も移動中に遭遇する可能性のある魔物などが書かれている。魔物と遭遇をしたら戦わなければならないということだ。危険そうなので、<護衛依頼>もスルーすることにした。


 危険が少なく、私でも出来そうな依頼を<採取依頼>の中から仕事を探す。

 採取依頼も、掲示されている内容をみると、上級、中級、初級の三段階があるようだ。上級の方が初級よりも報酬が多いから、このランクというのは、難易度のようなものを示しているように思える。ランク上級のアダマンタイトの採取依頼は、アダマンタイトとかいう金属1キロ毎に金貨10枚という報酬。かなり高額なように思える。

 採取には、植物の名前のようなものがあるが、名前だけ書かれていてどこに群生しているか分からない。

 そもそも色、形など、どんな形なのかも分からない。植物の採取とかなら、植物図鑑とかを手に入れなければならないだろう。

 1枚の採取依頼が私の目に留まる。


・・・・・・・・・・・・・・

 <採取依頼>

 ランク:初級


 対象:アナウサギ


 条件:生け捕り


 報酬:一匹につき銅貨1枚


 *特記事項:

  体長30~40センチ

  体重1.2~2.5キロ

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 ウサギの生け捕りかぁ。ウサギなら危険がなさそうだな、と思う。あ、でもウサギって俊足だったような気がする。小学校で飼育していたウサギが逃げ出したとき、人海戦術で校庭の隅に追い詰めてやっと捕まえることができたような記憶がある。罠かなにかで捕まえるのだろうか。人参をぶら下げた檻を用意して、その人参をかじった瞬間に出口が閉まるとか、そんなネズミ取りのような罠でも準備すればいいのだろうか。報酬が1匹につき銅貨1枚で、宿の支払が一日銅貨5枚だから、食費のことなどを考えると毎日10匹は捕まえたい。罠をたくさん買わなければならないわね、と考える。

 とりあえずその依頼を止めてあるピンを外し、カウンターに持っていく。


「アナウサギの生け捕りか、そいつは新米にはお似合いの仕事だな」と依頼書を私の手からさっと取り上げて、茶髪マッチョ男が笑いながら言った。この男まだ居たのね……。暇なのかしら?


「別にあなたに関係ないでしょ」と私は言って、依頼書を奪い返す。


「確かにお前さんがどうなろうと俺には関係はないがな。ついでにこの依頼も受けとけや」と茶髪マッチョ男が2枚の依頼書を私に差し出す。


・・・・・・・・・・・・・・

 <採取依頼>

 ランク:初級


 対象:ヨモギ


 条件:採取後1日以内に引き渡すこと


 報酬:50グラムにつき銅貨1枚


 *特記事項:なし

・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・

 <採取依頼>

 ランク:初級


 対象:オオバコ


 条件:全草


 報酬:50グラムにつき銅貨1枚


 *特記事項:根に付着した泥はよく洗い落すこと

・・・・・・・・・・・・・・・


「ヨモギとオオバコの採取依頼? これは何?」と私は首を傾げる。


「ん? ヨモギは料理屋が香辛料にでも使うんだろ。オオバコは乾燥させて生薬にでもするんだろ」と茶髪マッチョ男は言う。


「違うわよ。そういうことを聞いてるんじゃないわ。どうして私がその採取依頼もうけなきゃならないのよ」と私は言う。


 テーブルに座っている男が、吹き出すように笑った。他の男も先ほどの笑いのように、愉快に、腹を抱えて笑っているというよりも嘲笑しているように感じる。場の空気が完全にしらけきった感じだ。私が何か言ったのだろうか?


 茶髪マッチョ男も苦笑いをしている。


「あ、いやな。アナウサギを捕りにくんだったら、この二つも同時に受注するってのが、定石っていうか、常識というかな……。お前、アナウサギが穴蔵に潜り込んでいる間、何してる気だ?」


「ん?」と私は思う。確かにアナウサギが穴に入っていたら、出てくるまで待っているしかない。罠を設置したとしても、罠にウサギが掛かるまで待っているしかない。待機時間について何も考えていなかったことに気づく。


「もしかして、アナウサギが穴から出るのを待つ間、そのヨモギとオオバコを採取していろってこと?」と私は聞く。


「その通りだ。アナウサギの巣の近くには、大体ヨモギやオオバコが群生している。だから、待っている間は少しでも金を稼ごうと、巣の近くにある草や木の実を採取したりするんだがな。狩りが得意なやつは、狐などの討伐依頼を受けながらアナウサギを捕獲したりしているが、お前の身なりじゃ、狩りが得意そうな感じでもないしな」と茶髪マッチョの男は言った。


「なるほどね。ありがとう。助言に従って、この二つの依頼も受けておくわ」と私は言って、カウンターに3枚の依頼書を出す。


「ギルドカードの提示をお願いします」と受付の男は言う。カードを渡すと、受付の男は、受付に張られているガラス面にカードを触れさせる。私は、駅の改札でSUICAをタッチするみたいだなぁとか思ったりする。


「出来高制の報酬なので、前受金としては3件の最低報酬である銅貨3枚の5%とをいただきます」と受付の男は言った。


「あ、そういう仕組みなのね。じゃあ、仲介手数料はどうなるの?」と私は確認の意味で聞く。


「その分は、報酬から差し引かせていただきます」と受付の人の返答。やはりそういう仕組みなのね、と思いながら巫女からもらった金貨を1枚受付に渡す。


「金貨1枚お預かりします。お釣りは、銅貨99枚と銅銭85枚となりますが、受け取られますか?ギルド口座に預ける形になさいますか?」と受付の男が聞いてくる。

 小銭が多いわね……。

「ギルド口座でお願い。その口座から宿代も引き落としできるのでしょ?」と私は聞く。


「はい。宿でギルドカードを渡していただければギルド口座からの引き落としが可能です」


「それなら他の金貨も預けて置くわ」と言って、受付に金貨8枚を渡す。手持ちは金貨1枚にしておく。金貨を持ち歩くなんて、多額の現金を持ち歩くみたいで危なっかしいしね。 


「依頼の登録と口座への入金が完了しました。依頼書はまた掲示板に戻して置いてください」と受付は相変わらず無表情での対応。


「わかったわ。ちなみにヨモギとオオバコってどんな草か確認したいのだけど。あと、宿と服屋は何処にあるのかしら?」と私は受付に聞いた。


 ・


 私が冒険者ギルドから出ようとすると、茶髪マッチョの男が立ちふさがる。


「何よ?」と私は聞く。


「一応、もう一個だけ教えといてやる。先輩冒険者からの親切心ってやつだ。アナウサギは、太陽の昇る早朝と、夕方太陽が沈んでからしか穴から出ないぜ。昼間は穴蔵で寝ている」


「そう。分かったわ。ありがとう」と言って、立ちふさがる茶髪マッチョ男の横をすり抜けてギルドを後にした。

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